平成25年度までの結果より、Ang1には血管保護作用があり脳虚血後はAng1の作用が低下していることが示唆された。このため、1.Ang1様作用を示す薬剤を脳虚血時に投与し、作用をもつ適切な投与量の検討 2.上記の薬剤の投与による脳虚血、特にtPA使用時の効果を確認する。急性期における脳出血・脳浮腫の抑制効果、および回復期の血管新生による機能改善の検討 について実験を行った。 自家血血栓によるラット脳塞栓モデルを使用し,脳虚血後1時間でtPA療法を行うtPA 1h群,4時間で行うtPA 4h群,tPA療法を行わない永久閉塞群(PMCAO)群を作成した.虚血24時間後の中大脳動脈領域の大脳皮質を試料として,抗Ang1抗体を用いたウエスタンブロット(WB)および免疫染色を行った.またtPA療法後の脳出血や脳浮腫に対するAng1の効果を検証するため,tPA 4h群に対し,組み替えAng1蛋白(COMP-Ang1)30μgないし偽薬(COMP蛋白30μg)を経静脈的に投与し,虚血24時間後の脳出血量,脳浮腫および脳梗塞体積,神経学的予後について検討した. WBでは,Ang1蛋白発現量はSham 群と比較し,いずれの群においても低下した(P < 0.05).一方,Ang1陽性血管数はtPA 4h群,PMCAO 群ではSham群,tPA 1h群と比較し有意に低下した(いずれもP < 0.05).さらにtPA 4h群においてCOMP-Ang1を投与したところ(N=11),周皮細胞における取り込みが認められ,偽薬群(N=9)と比較して脳出血量および脳浮腫が抑制された(P = 0.005および0.007).また,有意差は認めなかったが,神経機能予後は改善の傾向が見られた.
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