研究課題
申請者は前年度までにリソソームタンパク質分解系の一つであるシャペロン介在性オートファジー(CMA)の活性を評価するマーカータンパク質であるGAPDH-HaloTag (GAPDH-HT)を安定的に発現する細胞株を確立し、GAPDH-HTの細胞内へのドット状集積によりCMAだけでなくリソソームタンパク質分解系の別経路であるミクロオートファジー(mA)の活性評価も可能であることを解明した。この新規評価系を用いて、これまでにCMAを活性化すると報告されているミコフェノール酸(MPA)とレチノイン酸受容体アンタゴニストの一つであるLE540がCMAだけを活性化しているのか、それともmAの両方に影響しているのかを検討した。CMA及びmAの活性評価はmA関連タンパク質であるRab7及びCMA関連タンパク質であるLAMP2Aをそれぞれノックダウン下状況でのGAPDH-HTのドット状集積により評価した。その結果、MPAは主にCMAの活性化を引き起こす一方で、LE540はCMA, mAの両者の活性化を惹起する、ということが示唆された。これまでのCMAに関する研究はCMAとmAを混在させた評価系で行っていることが多く、CMAとmAを別々に評価する実験系を用いることで、これまでにCMAに影響すると報告された薬物がmAに関しては異なるプロファイルを示す、ということが明らかとなった。また、神経変性疾患の一つであり、最近原因遺伝子の同定された脊髄小脳失調症21型(SCA21)の発症にCMA/mAの活性変化が関与する可能性を検討するため、SCA21患者で発見された変異型TMEM240をGAPDH-HT発現細胞に過剰発現させた。その結果、野生型TMEM240を発現させるだけで、CMA/mA活性の減弱による基質タンパク質(GAPDH-HT, MEF2D)の増大が観察され、CMA/mA活性が低下していたが、変異型TMEM240を発現させるとその活性低下が増悪することが明らかとなり、CMA/mA活性の低下がSCA21の発症原因の一つである可能性も考えられる。
3: やや遅れている
CMAだけでなくmAの解析も行えている部分は当初の予定よりも進んでいる部分であるが、マウスを用いた解析が進んでいない点でやや遅れている。
引き続きパーキンソン病や脊髄小脳失調症を中心とした神経変性疾患におけるCMA及びmAの関与を培養細胞モデルを使って解析することを進めていく。マウスを用いたin vivoの解析については、トランスジェニックマウスの作製はどうしても時間がかかるため、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入により神経変性疾患や精神疾患モデルにおける解析を行っていく予定である。
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