平成26年度に引き続き、マイクロRNA結合タンパク質であるAgo2とシナプス関連タンパク質のシナプス前終末への集積を解析した。平成26年度に抗Ago2抗体でシナプス前終末への集積を確認したが、同抗体がAgo1も認識することが判明したため、V5-Ago1、2をそれぞれ大脳皮質神経細胞に発現させて集積を確認した。その結果、Leucine-Rich Repeat Membrane Protein-2 (LRRTM2) を付加したビーズによるシナプス前終末の誘導に伴い、V5-Ago2のビーズ直下の軸索への集積が観察されたが、V5-Ago1の集積は認められなかった。また、FMRP(脆弱X精神遅滞タンパク質)が結合するmRNAの翻訳産物のうち、活性帯 (active zone) タンパク質であるMunc-18だけでなく、Munc-13もシナプス前終末の形成に伴い集積することが明らかになった。Munc-18集積の時間的経過を計測したところ、シナプス小胞タンパク質であるシナプトフィジンより遅れて集積されていくことがわかった。前年度までの結果と合わせると、シナプス前終末の形成に伴いまずシナプス小胞タンパク質が集積し、Ago2が集積するのと同時期に活性帯タンパク質であるMunc-13とMunc-18が集積すると考えられる。今後、シナプス前終末に伴う活性帯の集積におけるFMRPの役割をさらに検討し、局所翻訳を介した制御機構を明らかにする予定である。
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