研究課題
基盤研究(C)
近年、硫化水素およびその関連物質が様々な神経機能に関与することが明らかとなってきたが、そのシグナル制御機構は未だ不明な点が多い。我々は、NO/ROSシグナル分子である8-ニトロ-cGMPが硫化水素およびその関連物質によってそのレベルが制御され、新規二次メッセンジャーとして8-メルカプト-cGMP(8-SH-cGMP)に変換されることを発見した。本研究では、脳神経系における8-SH-cGMPの産生機構、およびその生理・病理作用を解明することを目的とした。平成25年度は、脳神経系における8-SH-cGMPの産生を解析するために、LC-MS/MSによる安定同位体希釈法で、ラットの各臓器(農を含む)、グリオーマ細胞、神経モデル細胞であるPC12細胞、初代培養神経細胞で産生される8-SH-cGMPの定量を行った。RNA干渉法を用いた実験から、8-SH-cGMPの産生には、システインの代謝系酵素であるcystathionine β-synthaseが関与していることを明らかにした。さらに、8-SH-cGMP特異的抗体の作製を試み、ポリクローナル抗体野作成に成功した。機能解析をするために、膜透過性8-SH-cGMPの調製も試み、リボースの2位にブチリル基を導入した8-SH-2'-O-butyryl-cGMPを得た。8-SH-2'-O-butyryl-cGMPを細胞培養液に加え、細胞内8-SH-cGMPをLC-MS/MSで解析したところ、8-SH-2'-O-butyryl-cGMPが細胞内に移行し、細胞内エステラーゼによりブチリル基が除去され、8-SH-cGMPに変換されていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、「8-SH-cGMP検出方法の確立」、「膜透過性8-SH-cGMPの調製」を中心に研旧を行う予定であった。8-SH-cGMP検出方法に関しては、LC-MS/MSによる安定同位体希釈法の確立、8-SH-cGMP特異的抗体の作製する計画であったが、いずれも達成できた。膜透過性8-SH-cGMPに関しては、8-SH-2'-O-butyryl-cGMPの合成に成功し、実際に細胞膜を通過して、細胞内に移行することをLC-MS/MS、蛍光免疫染色法で確認した。
8-SH-cGMP検出に関しては、引き続きLC-MS/MSを用いた解析を行う。8-SH-cGMP特異的抗体に関しては、ELISA詩捨身を構築し簡易定量法の確立、免疫染色法の確立を目指すとともに、安定的に抗体の供給を可能にするため、モノクローナル抗体の作製も並行して行う。機能解析に関しては、25年度に作製した8-SH-2'-O-butyryl-cGMPを用いて、神経伝達物質の放出、神経細胞死などを解析していく。
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