研究課題
硫化水素が「第三のガス状メディエーター」として注目され、脳神経系においても様々な生理・病理機能が報告されてきた。しかしながらその産生機構、作用機構の詳細に関しては不明であった。我々は、一酸化窒素/活性酸素シグナルの二次メッセンジャーとして、8-二トロ-cGMPを世界に先駆けて発見し、神経機能を含め様々な生理・病理機能を発揮することを報告してきた。また、8-二トロ-cGMPは硫化水素関連物質と反応し、8-メルカプト-cGMPに変換されることを発見した。本研究では脳神経系における8-メルカプト-cGMPの産生機構、およびその生理病理作用を解明することを目的とした。平成26年度は、生体内で機能する硫化水素関連物質として、システインのSH基にイオウが過剰に付加したシステインパー(ポリ)サルファイドが生体内に多量に存在することを示した。これらのパーサルファイドを含む化合物は活性イオウ分子種と命名された。また、生体において硫化水素はほとんど産生されず、活性イオウ分子種が生体内で主に機能していることを報告した。活性イオウ分子種は、8-二トロ-cGMPと反応し、効率よく8-メルカプト-cGMPに変換されることを明らかにし、8-メルカプト-cGMPが活性イオウ分子種の二次メッセンジャーである可能性を示した。また、機能解析として、ラット小脳初代培養神経細胞を用い、メチル水銀毒性試験を行ったところ、メチル水銀処理によって、活性イオウ分子種の減少に伴い、8-二トロ-cGMPから8-メルカプト-cGMPの変換が抑制されることを見出し、メチル水銀毒性の新たな毒性発現機構を提示した。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度以降「脳神経系における8-メルカプト-cGMPの産生」、「8-メルカプトcGMPの生理・病理作用」を研究する予定であった。「脳神経系における8-メルカプト-cGMPの産生」に関しては、脳や培養神経細胞で、LC-MS/MSを用いた定量的検出法、抗体を用いた蛍光免疫染色法で検出に成功し、また、活性イオウ分子による産生機構を明らかにした。「8-メルカプトcGMPの生理・病理作用」に関しては、初代培養神経細胞を用い、メチル水銀毒性試験を行い、メチル水銀毒性への8-メルカプトcGMPの関与を示唆する結果を得ている。
「8-メルカプト-cGMPの産生」に関しては、脳や培養神経細胞で、LC-MS/MSを用いた定量的検出法、抗体を用いた蛍光免疫染色法で検出をする。病理機能との関連、また、活性イオウ分子種との関連についても解析する。「生理・病理作用」に関しても、引き続き初代培養神経細胞を用い、メチル水銀毒性試験を行いう。平成25年度に作作製した膜透過性8-メルカプト-cGMPを用い、詳細な検討を進めていく。
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