研究課題/領域番号 |
25430072
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
須賀 圭 杏林大学, 医学部, 講師 (30306675)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / ERストレス / アルツハイマー / オートファジー / SNARE / syntaxin |
研究実績の概要 |
神経変性疾患の中でも特に遅発性のアルツハイマー病(AD)の発症機構や進行を調節しうる有力な分子標的の候補の一つとして、我々はAD関連蛋白質の細胞内輸送やプロセッシングを調節することを示したSyx5 (シンタキシン5)を含むER/GA-SNARE (小胞体/ゴルジ-スネア)に注目している。ER/GA-SNAREがERストレス誘導性オートファジー経路に関与し、その経路とAD関連蛋白質分解系を仲介する役割があるという仮説を検証することを目的としている。今年度はERストレス応答性ER/GA-SNAREの発現制御機構とAD関連蛋白質分解系の中でもERストレスに応答したSyx5のAPPプロセッシングへの影響に焦点を当てて解析を行った。また今年度は、株化細胞だけでなく初代培養した神経細胞を用いてERストレスに応答してER/GA-SNAREの発現上昇が起こるかを検証した。ラット海馬由来の培養ニューロンにおいても様々なERストレスに応答したER/GA-SNAREの発現上昇が見られた。転写レベルにおける調節を検討したところ、ニューロンにおいてもストレス誘発に伴う転写活性の上昇がER/GA-SNARE蛋白の新規合成を促進していることがわかった。また、株化細胞ならびに初代培養細胞においてAD関連蛋白質分解がERストレスに応答してどのように変化するか検証した。結果、ERストレス負荷によりAPPプロセッシングが阻害されることを見出した。またそれは、Syx5蛋白質を発現抑制させることにより回復することを明らかにしたので報告した(Suga et al., Exp Cell Res. 2015)。今後さらにERと異なる細胞内コンパートメントであるゴルジ体に由来したストレスに対しても上記の効果を検討することも視野に入れ、以降の計画としてER/GA-SNAREのERストレス誘導性オートファジー経路への関与ならびにAD蛋白質分解系への関与を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階においてまずはマウス由来株化細胞におけるERストレス応答性ER/GA-SNAREの発現制御機構とAD関連蛋白質分解系への関与を示したので報告した(Suga et al., Exp Cell Res. 2015)。現在は他のヒト由来細胞においてゲルシフトアッセイ(EMSA)、クロマチン沈降法(ChIP assay)を用いてERストレスに応答したSyx5発現調節に関わるシグナルカスケードを同定しているところである。また、初代神経培養細胞を用いた系においてAD関連蛋白質分解がERストレスに応答してどのように変化するか検証しており、ERストレス負荷によりAPPプロセッシングが阻害されることを見出している。さらにERストレス負荷またはアポトーシス誘導時に同時にSyx5蛋白質の発現抑制させる操作を行うことにより培養神経細胞が脆弱になることも見出しており、当初予想していた結果ではあるが生存維持機構へのSyx5蛋白質の関与も示唆できた。また、オートファジー誘導時のER/GA-SNAREをライブイメージングを用いてその過程のダイナミクスを可視化する系の立ち上げも完了し、加えてFRETの手法やCaspase3活性化のリアルタイムイメージングの系を用いたシングルセルレベルでの細胞死検出実験系についても既に報告した(Neurosci. Lett. 2013、Exp Cell Res. 2015)。それにより今年度後半で遂行予定の実験もあわせて準備が整ってきた。よって実験計画の達成度はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
H27年以降前半は、ERストレス誘発によりその発現が上昇するER/GA-SNAREの上流の制御因子を同定することによりシグナル伝達経路を明確にする。そのためにER/GA-SNARE転写活性の上昇に関与する応答配列に結合するERストレス誘導性転写因子の同定ならびに上流に位置するERストレスセンサーの同定によりカスケードを明らかにする。後半はオートファジーを介したER/GA-SNAREのAD蛋白質分解系と生存維持機構への関与とその役割を検討する。今後さらにERと異なる細胞内コンパートメントであるゴルジ体に由来したストレスに対しても上記の効果を検討することも視野に入れ、以降の計画としてER/GA-SNAREのERストレス誘導性オートファジー経路への関与ならびにAD蛋白質分解系への関与を検討する。最後にERストレスからオートファジー誘導そして神経細胞の生存維持(または細胞死)に至る一連のプロセスにおけるAD関連蛋白質の輸送と分解経路及びER/GA-SNAREの動態をタイムラプスイメージングシステムを用いてそれら過程のダイナミクスを可視化する。それによりER/GA-SNAREのオートファジー系を介したAD関連蛋白質分解への時空間的な関与を明らかにできる。以上の計画に基づく推進方策をもとに実験を遂行して総括をすることにより、それら経路のクロストークを担うER/GA-SNAREの時空間的な関与のメカニズムを明らかにし、このER/GA-SNARE分子を実質的にほぼ最下流に位置するエフェクター分子として想定できるので、二次的な副作用が少ない新規のAD治療の分子標的として格好のターゲットとして位置づけられると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した消耗品の端数分であり、あらたに試薬を購入する分としては額が少ないため次年度分に持ち越したものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分で購入予定の高額な試薬類への充当とする予定である。
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