研究課題
基盤研究(C)
本年度はCadherin-7(Cdh7)の詳細な発現解析から開始した。入手可能なCdh7抗体にはマウス組織の免疫染色に使用出来る抗体がなかったため、ウサギに免疫してまず抗Cdh7特異抗体を作製した。そして、抗原吸収実験やshRNAによる発現抑制実験など種々の実験系により、作製したCdh7抗体の特異性が確認された。先行して行ったDNAマイクロアレイ解析の結果と一致して、シナプス形成期である生後14日目の橋核神経細胞でCdh7の高い発現が認められ、登上線維神経細胞では発現がみられなかった。また、Cdh7は橋核神経細胞以外の苔状線維神経細胞群でも発現していた。橋核神経細胞におけるCdh7の発現を経時的に調べたところ、Cdh7は橋核神経細胞の軸索が小脳に到達する以前の胎生後期から出生後のシナプス形成期にかけて高発現し、その後、成体期になると大きく発現量が減少することが明らかになった。一方、生後14日目の小脳では、橋核神経細胞の軸索の標的細胞である小脳顆粒細胞やゴルジ細胞、また非標的神経細胞であるプルキンエ細胞で発現がみられた。興味深いことに、プルキンエ細胞ではCdh7はゴルジ体に限局した細胞内分布を示し、細胞膜や樹状突起上には局在していないことが明らかになった。一方で、小脳顆粒細胞では、Cdh7は細胞膜上や樹状突起に局在していた。また、小脳内の橋核神経細胞の軸索末端にCdh7が局在していることも明らかになった。これらの発現・局在パターンは、Cdh7が橋核神経細胞と小脳顆粒細胞との間のシナプス結合を制御している可能性を支持するものであった。また、上述のDNAマイクロアレイ解析で橋核神経細胞で特異的に発現している可能性が示唆された転写因子群についての組織学的発現解析も開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の通り、Cdh7の詳細な発現パターンを明らかにしており、また上流転写因子の発現解析にもすでに着手し、次年度以降の研究の準備が順調に進んでいるため。
今後は、まず橋核神経細胞と小脳顆粒細胞との間のシナプス結合におけるCdh7の詳細な役割を様々なin vitro、in vivo実験系から明らかにしていく。また、Cdh7の候補上流発現制御因子の解析を進めるための初代神経細胞培養系や種々の生化学実験系の立ち上げを進めていく。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる予定である。購入を予定していた物品のうち本年度までに購入が終わらなかった抗体などの消耗品を購入する予定である。
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Molecular Brain
巻: 6-31 ページ: -
doi: 10.1186/1756-6606-6-31.