研究課題/領域番号 |
25430075
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
松村 喜一郎 帝京大学, 医学部, 教授 (50260922)
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研究分担者 |
真先 敏弘 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00585028)
萩原 宏毅 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (80276732)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジストログリカン / 神経系 / 蛋白質プロセッシング / 糖鎖修飾 |
研究概要 |
α-ジストログリカン (α-DG)はこれまで筋ジストロフィーの原因蛋白質として精力的に研究が進められて来た。しかし近年骨格筋以外におけるα-DG の機能が注目されている。申請者らはこれまでにα-DG のN 末端ドメイン (α-DG-N) がproprotein convertase により切断され細胞外へと分泌されること、そして切断されたα-DG-Nは脳脊髄液からさらには脳、末梢神経に至るまで神経系に豊富に存在することを明らかにしてきた。しかしこれら神経系におけるα-DG-N の機能やその生理学的、病態学的意義については全く不明のままである。そこで、本研究では1) α-DG-N の神経系における未知の生理的機能を明らかにし、2) α-DG-N の神経疾患における病態への関与を検討することを目的とする。 初年度の平成25年度は、α-DG-Nトランスジェニックマウスの作製をおこなった。そしてCAGプロモーターを用いて既定の方法により3系統のF1マウスの作出に成功した。これらマウスはこれまでのところ肉眼的観察においては野生型マウスと差異はないようで、今後in vivoにおけるα-DG-Nの機能、脳神経系に及ぼす影響などを順次検討する予定である。一方で、α-DG-N と結合してα-DGのムチンドメインの糖鎖修飾を亢進しα-DGとラミニンの結合性を亢進させることが知られている糖転移酵素、LARGEの機能解析を行った。この結果、マウスや培養細胞へLARGEを過剰発現させると筋再生が抑制されること、この一因としてinsulin-like growth facter-1の発現低下が関与していることを明らかにした。このことからα-DG-Nは骨格筋筋損傷後の筋再生を制御している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
α-DG-Nトランスジェニックマウスの作製は予定通り完了し、今後はその解析をする事になる。またα-DG-Nとの関連で、LARGEの機能解析によりinsulin-like growth facter-1を介して骨格筋再生に影響を与えることを見いだした点は大きな成果であった。しかし本年度予定していた脳および末梢神経におけるα-DG-Nの局在の決定や、α-DG-Nのリコンビナント蛋白質による培養細胞への影響を観察する実験はまだ行えていない状況である。これらの点を考慮してやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の大きな柱の一つがα-DG-Nトランスジェニックマウスの解析である。作出した3系統について出生、発育や行動異常の有無などの表現型を観察する。そして光学顕微鏡、電子顕微鏡、さらに免疫蛍光抗体法も併用しながら脳や末梢神経における形態変化の有無を検討する。さらにモーリス水迷路試験、パッシブアボイダンス試験、コミュニケーションボックス試験などを行いα-DG-Nの過剰発現により空間認知、学習能力、短期記憶、情動、ストレスの状況などに変化が生じないかどうか、野生型マウスとの比較検討を行う。 もう一つの柱はα-DG-Nを介したシグナル伝達経路の解明である。その第一歩としてはα-DG-Nの受容体を同定することが重要となる。このためマウスの脳の膜分画を可溶化してα-DG-Nを固定化したビーズとのプルダウンアッセイを行い、2次元電気泳動上の特異的スポットを切り出してMS解析により受容体の同定を試みる。さらにその下流に位置するシグナル伝達経路を明らかにするために、DNAマイクロアレイ解析やリン酸化アレイ解析を行い網羅的に遺伝子発現や蛋白質のリン酸化の変動を検出して候補分子を絞り込んでいく。 最後に、これら研究課題が順調に進行した後には、神経疾患の病態との関与に関しての研究に取り組んでいく。α-DG-N は脳や末梢神経に多量に存在することから何らかの神経疾患との関連性が示唆される。本研究では原因が明らかにされていない神経変性疾患や末梢性ニューロパチーにおけるα-DG-Nの異常の有無を検討する。このためにブレインバンク保存の認知症疾患や神経変性疾患の死後脳、また末梢神経生検や脳脊髄液などの検体を用いてα-DG-Nの発現量や発現部位に変化がないかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していたプラスチック製品が残金よりも高額なため。 翌年度の助成金と合わせてプラスチック製品を購入する。
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