研究課題
基盤研究(C)
平成25年度は研究実施計画に従い、エタノール摂取時における神経可塑性関連因子発現調節機構の探索とそれらの細胞内情報伝達系制御機構の解析について検討した。まず、エタノール慢性摂取により、エタノールおよびモルヒネの依存形成の増強が認められた。そこで、慢性摂取時および休薬後における可塑性にかかわる因子の変化について検討したところ、精神依存に重要な腹側被蓋野領域においてヒストンH3のアセチル化の亢進が認められた。次に神経可塑性関連因子のプロモーター領域におけるアセチル化の変化について検討したところ、エタノール慢性摂取時においてneurexin、post-synaptic dencity 95、GluR1、NR2Bの有意な増加が認められた。さらに、休薬時においてもこの増加は維持されていた。そこで関連する情報伝達系について検討したところ、μオピオイド受容体経路や電位依存性L型カルシウムチャンネルの経路において、G protein-coupled receptor kinase 2やCalcium/calmodulin-dependent protein kinase II、Calcium/calmodulin-dependent protein kinase IV蛋白質の有意な増加が認められた。さらに、glycogen synthase kinase 3(GSK3β)の活性化が認められたことから、エタノール慢性摂取により神経の可塑的変化が誘導されていると考えられる。そこでGSK3βの阻害薬であるリチウムを前処置したところ、エタノール慢性摂取により認められる、モルヒネの依存形成の増強は有意に抑制された。以上の結果より、エタノール慢性摂取により細胞内情報伝達系の変化に伴う神経の可塑的変化が誘導され、依存症や再燃が引き起こされたと推察される。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の目的および研究計画は、アルコール摂取時における神経可塑性関連因子発現調節機構の探索とそれらの細胞内情報伝達系制御機構の解析として、アルコール摂取により誘導される神経の可塑的変化関連因子ならびにその関連する情報伝達経路を網羅的に解析することであった。平成25年度に得られた結果は、研究計画に基づいたアルコールの慢性摂取による神経可塑性関連因子や細胞内情報伝達系の変化について見出すことが出来たことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後は平成25年度に得られた結果を応用し、アルコール慢性摂取における神経の可塑的変化に対する脂質代謝系の関与、さらには脳機能における脂質メディエーターの変化および役割について検討を行う。研究計画に基づき、アルコール摂取動物より関連脳部位を採取し、アルコール代謝酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ:ADH,ミクロゾームエタノール酸化系:MEOS(CYP2E1),アルデヒドデヒドロゲナーゼ:ALDH)や脂質代謝酵素(ホルモン感受性リパーゼ:HSL)の変化について検討を行う。さらには膜構成成分であるホスファチジン酸(PA)、ジアシルグリセロール(DAG)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)を測定し、アルコール摂取時における細胞内情報伝達系制御機構に対する脂質代謝系の関与ならびに機能的意義の解析について検討する。
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