研究課題
平成25年度および26年度に得られた結果を基に、神経可塑性に関わる因子について検討を行った。現在までに dopamine 神経系の可塑的変化への関連因子として、leucine-rich repeat kinase 2 (LRRK2) が報告されている。そこで本研究では、ethanol 慢性処置モデルにおける LRRK2 の関与について検討したところ、LRRK2 および p-LRRK2 は腹側被蓋野領域においてタンパク質発現量の有意な増加が認められた。そこで、免疫組織学的染色法を用いて LRRK2 の腹側被蓋野領域における局在を検討したところ、dopamine 神経マーカーである tyrosine hydroxylase (TH) 陽性細胞上に LRRK2 の免疫活性が認められた。次に、LRRK2 のリン酸化の調節をしている protein kinase A (PKA) について検討を行った。その結果、ethanol を慢性処置することにより、腹側被蓋野領域での PKA タンパク質発現量の有意な増加が認められた。そこで、ethanol 慢性処置による dopamine 神経機能への影響を検討するために、LRRK2 阻害剤である GSK2578215A (10 nmol/mouse, i.c.v.) を ethanol 慢性処置時に 5 日間投与し、休薬後、morphine (5 mg/kg, s.c.) 誘発報酬効果への影響を検討した。その結果、ethanol 慢性処置により認められる morphine 誘発報酬効果の増強は、LRRK2 阻害剤の処置により有意に減弱した。以上、本研究の結果より、ethanol 慢性処置により腹側被蓋野領域における AC/PKA/LRRK2 経路が亢進し、dopamine 神経の反応性の亢進に影響を与えている可能性が示唆された。
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