研究課題
本研究は、オリゴデンドロサイト特異的なストレス応答機構を明らかにする上で、リン酸化及びメチル化シグナル変化による器質的変化の制御機構を解明し、白質機能維持によるうつ病の治療応用へと展開する為の研究基盤を確立することが目的である。平成26年度は、まずは急性ストレスとしての単回ストレスマウスと慢性ストレスモデルマウスの脳梁サンプルを用いて、メチル化レベルおよびリン酸化レベルの変化について検討した。その結果、慢性ストレス時のみ、メチル化レベルの上昇、Sgk1ーNDRG1リン酸化レベルの亢進を観察した。さらに、グルココルチコイド受容体については、脳梁オリゴデンドロサイトにおける翻訳後発現調節因子としてnon-coding RNAのひとつmiR-124aによる発現レベルの調節を受けている事を新規に見出した。miR124a発現変化はストレス負荷と連動していた。ランビエ絞輪周辺の構造変化について電子顕微鏡を用いた検討を開始した。その結果、局在化タンパクの広がりとは対照的に、ノード領域、パラノード領域共に慢性ストレスによりそれらの幅が縮小している事を見出した。さらに、軸索の活動と密接に関連するNa-K ATPase活性を比較検討したところ、慢性ストレスマウス脳梁においてその活性が有意に低下していた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度に慢性ストレス負荷によるオリゴデンドロサイト特異的なストレス応答機構の詳細な検討を進める上で重要な、Sgk1 KOマウスやTgマウスの作製に必要なプラスミドの設計を開始している。平成25年度、26年度共に順調に進捗しており、オリゴデンドロサイト特異的なストレス応答経路として、PI3K-Sgk1-NDRG1カスケードとPRMT1-PI3K-GRの相互作用が重要な役割を果たす可能性を明らかにした。さらに、ランビエ絞輪部の構造異常と神経軸索活性の関連についても見出すことが出来た。これらは、初年度及び2年目の当初計画にほぼ沿った内容に関する成果である。
平成27年度は、これまでの研究成果を元に更に詳細にオリゴデンドロサイト特異的、慢性ストレス特異的なメチル化ーリン酸化シグナル経路の探索を行う。まず、PDK1siRNA, Sgk1siRNAにより、これらリン酸化シグナルとPRMT1, PRMT8発現レベル、メチル化レベルの関連性をwestern blotting、免疫染色法、realtime PCR法、ELISAなどで検討する。また、逆にPRMT1siRNAによるSGK1リン酸化活性への影響や細胞の形態変化への関連性を同様に検討する。さらに、髄鞘の損傷や機能レベルの評価としてTBERS活性の測定を行う。Sgk1 KOやTgマウスの作製が間に合えば、ランビエ絞輪部の構造変化の有無について比較検討に進みたい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://www.med.kindai.ac.jp/toyo/study/index.html