研究課題/領域番号 |
25430081
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
前田 信明 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, プロジェクトリーダー (90202308)
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研究分担者 |
神村 圭亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (30529524)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グリピカン / シンデカン / プロテオグリカン / 神経筋接合部 / シナプス / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
プロテオグリカンは、細胞外基質及び細胞表層の主要構成成分として、神経回路形成等、様々な発生現象に寄与している。本研究課題では、ショウジョウバエ神経筋接合部(NMJ)形成、及びマウス大脳皮質形成に着目し、これらのプロテオグリカンの機能とその作用メカニズムを解明することを目指している。 ショウジョウバエ幼虫のNMJには、分泌型のパールカン、GPIアンカー型のグリピカン(Dlp)、及び膜貫通型のシンデカン(Sdc)が、主要なヘパラン硫酸プロテオグリカンとして発現する。本年度は、ショウジョウバエNMJにおけるDlp及びSdcの機能を解析した。まず、免疫組織化学法を用いて、これらのヘパラン硫酸プロテオグリカンのNMJにおける発現を解析し、両者ともシナプス後部に局在することを見出した。しかしながら、Sdcはグルタミン酸受容体(GluR)と共局在を示すが、Dlpは示さず、両者のNMJにおける局在は異なることが明らかになった。次に、Dlpを筋肉細胞特異的にノックダウンした個体のNMJを解析したところ、シナプスボタンの数が増加するとともに、GluRの発現レベルが増加していることが明らかになった。また、それに伴って、幼虫の移動速度も増大していた。一方、Sdc欠失変異体では、GluRの発現レベルが低下するとともに、幼虫の移動速度も減少していた。これらのことは、SdcとDlpが拮抗的に作用することによって、NMJにおける神経伝達及び幼虫の運動が制御されていることを示唆している。また我々は、両者の発現が脊椎動物のアドレナリン/ノルアドレナリンに相当するオクトパミンによって、ダイナミックに制御されていることを見出した。オクトパミンは昆虫の行動制御に重要な役割を果たしている生体アミンである。DlpとSdcは、オクトパミンにより誘導される神経回路の可塑的変化に寄与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンとヘパラン硫酸プロテオグリカンの機能的関係を、ショウジョウバエ及びマウスを用いて明らかにすることを目指すものである。本年度は、ショウジョウバエ神経筋接合部におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの役割について、新たな知見を得ることができた。しかしながら、人員不足のため、マウス大脳皮質におけるプロテオグリカンの解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、人員不足のためにマウスモデルを用いた研究が遅れている。そこで、研究期間を1年延長し、実験補助員1名を本科研費を用いて採用し、マウス大脳皮質形成におけるプロテオグリカンの機能を重点的に解析する。また、ショウジョウバエ神経筋接合部のオクトパミン依存的な神経可塑性に、シンデカン及びグリピカンがどのように寄与しているかについても、詳細な解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品として購入予定だった薬用冷蔵ショーケースは、本研究所他部門より譲り受けることができたため、約60万円の余剰が生じた。また、実験補助員の適任者が見つからなかった為、約60万円の余剰が生じた。また、人員不足のためマウスモデルを用いた実験を十分に進められず、約45万円の余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスモデルを用いた実験を担当する実験補助員の人件費として、約100万円を使用する。また、本実験に必要な試薬類の購入のため、約65万円を使用する。
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