研究課題
基盤研究(C)
本年度は多発性硬化症における視神経炎の発症メカニズムの解明と、薬剤を利用した視神経炎の治療研究を行った。疾患モデルとして実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)を活用した。治療効果については形態的な観察にとどまらず、多局所網膜電位の解析などを交え、総合的な視機能評価に基づいて判定を行った。我々の以前の研究からASK1欠損EAEの重症度は軽減されるが、発症率が変わらないことを判明した。高血圧治療薬でもあるcandesartanをASK1欠損EAEマウスに用い、その発症率が20%まで抑制され、また発症しても視神経炎の重症度が大幅に軽減されることを組織病理学及び電気生理学的手法によって解明した。そして骨髄由来樹状細胞を用いたin vitro の実験から、Angiotensin II 刺激によって細胞におけるTLR4 の発現が顕著に増加し、逆にそのアンタゴニストのcandesartan により、その発現上昇は抑制可能であることを突き止めた。フローサイトメトリーを用いた解析からcandesartan及びASK1阻害剤の相乗効果により成熟樹状細胞数が減少することを明らかにした。さらにナイーブT細胞を磁気分離し、LPS刺激によるT細胞増殖をBrduの取り込み実験で調べ、candesartan及びASK1阻害剤の相乗効果によりT細胞増殖が抑制されることを判明した。
2: おおむね順調に進展している
ASK1flox/flox : GFAP-Cre mouse(アストロサイトからASK1 遺伝子が欠損するマウス)の作製がほぼ完成した。
今後はcandesartan及びASK1阻害剤の相乗機能をさらに詳しく解析し、論文化していく。また引き続きASK1の領域特異的遺伝子改変マウスの解析を進める。
Candesartan及びASK1阻害剤の効果によるサイトカイン産生への影響やそれに関わるシグナルpathwayの解析を次年度に行うことになった。サイトカイン測定用ELISAキット及びシグナルpathway解析用抗体を購入する経費に使用する予定である。
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Cell Death and Differentiation
巻: 20 ページ: 1250-1256
10.1038/cdd.2013.91
巻: 20 ページ: 270-280
10.1038/cdd.2012.122