研究課題
本年度は多発性硬化症における視神経炎の発症メカニズムの解明と共に、薬剤を利用した視神経炎の治療研究も行った。疾患モデルとして実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis: EAE)を活用した。ブリモニジンは最近発売になった緑内障点眼薬で、本研究では視神経炎に与える効果を調べた。ブリモニジンをEAEマウスに点眼したところ、視神経や脊髄における脱髄抑制作用は乏しいものの、網膜神経節細胞の保護作用があり、多局所網膜電位の計測によって、視機能の有意な改善が認められた(Guo et al., Neurosci Lett., 2015)。また、我々の以前の研究からASK1欠損EAEの重症度の軽減が明らかになっていたが、このASK1欠損マウスでは全ての細胞からASK1が欠損しており、細胞種毎の影響をin vivoで観察するためには、細胞種特異的なconditional knockout (CKO)マウスの作製が必須となる。そこで新規にASK1flox/flox : GFAP-Cre mouse (アストロサイトからASK1遺伝子が欠損するマウス)、ASK1flox/flox : LysM-Cre mouse (ミクログリアからASK1遺伝子が欠損するマウス)、ASK1flox/flox : CD11c-Cre mouse(樹状細胞からASK1遺伝子が欠損するマウス)、ASK1flox/flox : Lck-Cre mouse (T細胞からASK1遺伝子が欠損するマウス)を作成し、各細胞種におけるASK1の働きをin vivoで詳細に検討した。その結果、アストロサイトやミクログリアにおけるASK1はEAEの重症度に関わり、樹状細胞やT細胞におけるASK1がEAEに与える影響はないことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
既存薬剤のブリモニジンによる視神経炎治療の可能性を示唆した。また、我々は以前酸化ストレスの産生を抑制可能なspermidineの内服投与を行ったところ、EAEの軽症化が観察された(Guo et al., Invest Ophthalmol Vis Sci., 2011)。これらの成果はブリモニジン、spermidineなどによる、複数の既存薬剤の併用効果を示唆するものであり、今後の臨床応用が期待される。さらに4種類のASK1細胞種特異的なconditional knockout (CKO)マウスの作製やそれらのEAE phenotypeの解析が完了し、詳しいメカニズムの解析に入っている。
我々のいままでの研究からASK1は炎症の他、軸索再生にも関わっていることが示唆された。今後はASK1細胞種特異的なconditional knockout (CKO)マウスのEAE のメカニズムを詳しく解析しながら、視神経挫滅における細胞種毎のASK1の機能を明らかにしていく。
試薬の節約に成功したため
消耗品を中心に使用予定
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (8件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Neuroscience Letters
巻: 592 ページ: 27-31
10.1016/j.neulet.2015.02.059
American Journal of Pathology
巻: 185 ページ: 756-764
doi: 10.1016/j.ajpath.2014.11.005
巻: 588 ページ: 108-113
doi: 10.1016/j.neulet.2014.12.054
Cell Death and Disease
巻: 5 ページ: e1333
doi: 10.1038/cddis.2014.296