研究課題/領域番号 |
25430084
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
志田 壽利 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任教授 (00144395)
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研究分担者 |
張 険峰 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (40374681)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HIV-1 / ラット / 感染モデル |
研究概要 |
研究の概要 HIV-1感受性のラットを作成する為に、既に我々はヒトCD4/CCR5/CXCR4/CyT1/CRM1遺伝子を導入したトランスジェニック(Tg)ラットを作成している。Tgラットから調製したマクロファージにHIV-1は効率よく感染するにもかかわらず、T細胞には感染効率が低く、かつラット個体では体内ウイルス量が検出限界以下であった。また、primaryラットT細胞の長期維持が難しく、HIV-1の増殖の詳細な解析が困難だった。今年度は上記の問題点を乗り越える試みを行った。 1. primaryラットT細胞を活性化する方法として、抗CD3/CD28抗体による刺激、PHA-P/IL-2, ConA/IL-2刺激の3種類を試みた。その結果ConA/IL-2刺激によってprimaryラットT細胞を活性化し1週間以上培養することに成功した。この条件では、HIV-1の感染効率はヒトCD4+ T細胞株(Molt4CCR5)と遜色無いことが分かった。 2. ウイルスが感染できる為に、宿主の自然免疫をかいくぐらなければならないことが広く知られるようになってきた。また、HIV-1はヒト細胞への感染時にインターフェロン(IFN)の誘導を妨害することが知られている。そこで、ラットIFN抗体存在下でHIV-1をラットT細胞株(ヒトCD4/CCR5 /CyT1/CRM1遺伝子を発現するようにしてある)に感染させると子孫ウイルス量が上昇した。そこで、IFN誘導に必要なラットIRF7の優勢阻害変異体を組み込んだHIV-1を作成して、野生型HIV-1とラットIFNの誘導阻害を検討した。その中で、予想外にラットIFNを誘導しにくいHIV-1株を見いだした。今後の、感染実験に使用予定である。 3. HIV-1の感染効率とIFNの感受性に影響を与える因子としてサイクロフィリンA(CyP)が知られている。そして、CyP結合領域の変異HIV-1が猿細胞へも感染できるようになることが報告されている。そこで、種々のCyP結合領域の変異HIV-1を作成した。今後の、感染実験に使用予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット感染モデルを作成する上で、上記のように乗り越えるべき種々の課題がある。今年は、その中で3点を検討し、2点において進歩が見られた。また、ラットへの感染効率を上昇させられる可能性のある種々のHIV-1株を作成した。従って、これらの進展をもとに次年度の研究が展開できる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 培養可能となったラットCD4+ T細胞に、昨年度に作成した種々のHIV-1を感染して、感染効率、子孫ウイルスの生産、IFNの生産頭を調べて、ベストのHIV-1株を選択する。 2. さらに効率よくラットIFN誘導を阻害する優勢阻害IRF7とIRF3を組み込んだHIV-1を作成して、感染効率を検討する。 3. ラットBST2がHIV-1の増殖を阻害することが報告されている。そこで、CAS9/CRIPRを利用してBST2ノックアウトラットを作成して、primaryマクロファージとCD4+ T細胞での感染・増殖効率を調べる。 4. ヒトCD4/CCR5/CXCR4/CyT1/CRM1/ラットBST2 KOラットを作成してHIV-1の感染・増殖を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究は順当に行われ、必要な消耗費等は満たされた。当初予算の270万円中37万円が余ったが、85%を有意義に使用しており、まずは順当な使用と考えている。来年度は予算が大幅に減るのでこの分を来年度の使用できるのはありがたい。 平成25年度の繰り越し分と26年度の予算を合わせて、本研究を遂行する為の試薬・消耗品等に使用する予定である。
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