ヒトオステオカルシンプロモーターの制御下でルシフェラーゼを発現するOC-Lucトランスジェニックマウスは、ヒトオステオカルシンプロモーターの活性変化を発光により感度良く追跡できるマウスであり、我々は妊娠期に頭蓋骨において二峰性の発光上昇が認められることを明らかにしている。最終年度では、妊娠期における頭蓋骨での遺伝子発現を、発光が上昇する妊娠後期と妊娠初日においてマイクロアレイで比較解析を行った。その結果、細胞膜やシグナル伝達発現に関連する因子の発現に広く変化が見られ、妊娠による骨代謝への影響が多大であることが明らかとなった。内在性マウスオステオカルシンに関しては、ヒトオステオルシン制御下のルシフェラーゼと異なり、妊娠後期に向けて発現が減少していた。この結果はリアルタイムRT-PCR結果と相関していたことから、マイクロアレイの結果が妥当であることが示された。反対に、ヒトオステオカルシンに関しては、プロモーター配列にビタミンD応答配列を含むこと、妊娠中は腎臓に加えて胎盤での25(OH)D 1-alphahydroxylaseの発現上昇がみられることなどから、妊娠中の発光上昇は、25(OH)D 1-alphahydroxylaseによる活性型ビタミンDの血中増加を反映していることが示唆された。実際に、OC-Lucマウスでは、骨のみならず胎盤での発光も検出されたことからも、OC-Lucマウスの発光は、ヒトにおけるオステオカルシンの発現制御をマウス体内で再現できていると考える。今後、OC-Lucマウスは、妊娠に関連した骨粗しょう症などの予防や治療にむけた機能性食品や医薬品などのスクリーニングに役立つものと期待される。
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