研究課題
アフリカツメガエルでは新たな遺伝子の転写は主に胞胚期から始まる事が知られており、胞胚期に達する前にTALENによって標的遺伝子が破壊されていなければ、初期発生に関わる標的遺伝子の働きを抑えることができない。よって標的遺伝子破壊がいつ行われているのかという点はTALENを用いた初期発生の研究において非常に重要な問題である。今回、初期発生におけるTALENによる標的遺伝子破壊の効率をいくつかの発生段階で調べたところ、胞胚期までの約8時間の間に60%程度起きていたが、数日たっても80%程度までしか上昇しなかった。この結果は、標的遺伝子破壊は胞胚期までのわずかな時間に起き易いという事を示している。TALEN法ではmRNAを注射するが、mRNAからタンパク質が作られるためにはある程度の時間がかかる。これらのことから受精時のTALENタンパク量を増加させれば標的遺伝子破壊の効率が高まると考えた。そこでTALEN mRNAを卵母細胞に注射し、2日後にホストのメスガエルの腹腔に戻して排卵・受精させた。この方法により、胞胚期までにTALENによる標的遺伝子破壊の効率をほぼ100%にまで高めることに成功した。しかし、意外な事にTALENタンパク質の合成は卵母細胞内ではほとんど行われておらず、受精後に急激に活性化されていた事が判明した。卵母細胞内でTALENタンパク質の合成を促進させれば更に標的遺伝子破壊の効率が高まる事が期待される。そこでいくつかの方法を試したところ、生殖質で発現しているDEADSouth遺伝子の3'UTRをTALEN mRNAに融合させることにより、卵母細胞でのタンパク合成の効率が高まる事が判明した。これら2つの手法を組み合わせることにより、TALENの活性を大幅に増大させる事が可能となった。以上の結果を Biology Open (2015) 4, 180-185 に発表した。
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Zoological Science
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10.1016/j.ydbio.2015.02.012