研究課題/領域番号 |
25430090
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
林田 直樹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40420517)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 熱ショック因子 / HSF2 / WDR5 / ヒストン修飾 / クロマチン / ヒストンメチル化酵素 / CRYAB / 転写因子 |
研究概要 |
熱ショック転写因子 HSF2 は哺乳類では4種類存在する熱ショック転写因子群の1つであり、神経発生や生殖細胞の分化に関与することが明らかにされていたが、最近、我々のグループによって、温熱ストレスなどによって引き起こされる細胞内蛋白質の変性から細胞を防御する機能を有することも明らかとなった (Shinkawa, Hayashida et al., Mol. Biol. Cell 2011)。 平成24度までの若手研究Bの成果において、ヒストン H3K4 メチル化複合体の構成因子である WDR5 と HSF2 が結合していることが in vitro と in vivo の両方で明らかとなった。今回、alphaB-crystallin (CRYAB) は HSF2 のターゲット遺伝子であることから、マウス胎児線維芽細胞(MEF)において HSF2 または WDR5 のノックダウンを行い、温熱ストレスによるCRYABの発現誘導を調べたところ、どちらのノックダウンでも顕著に誘導が抑制された。 クロマチン免疫沈降法と定量的 PCR 法を組み合わせた ChIP-qPCR 法によって、CRYABプロモーター上における WDR5 の結合は HSF2 依存的であること、HSF2 のノックダウンは転写活性化に働くヒストン修飾を低下させることをすでに示しているが、今回、WDR5 をノックダウンすると、HSF2 の結合が2分の1に低下することもわかった。またヒストン修飾にも同様に影響を与えていた。このほか、マイクロアレイ解析によって、HSF2 と WDR5 の共通のターゲット遺伝子もすでに同定している。 同様に ChIP-qPCR 法を用いた実験により、HSF2-WDR5 複合体には、H3K4 メチル化転位酵素 MLL を中心とした一連の因子が含まれていることを現在確定しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間で予定していた研究計画において、研究の進展の影響により、順序が入れ替わっているものがあるが、平成25年度において、平成26年に予定していた WDR5 の標的遺伝子群の網羅的解析がすでに実施され、HSF2 と WDR5 の共通の標的遺伝子が見いだされるという良好な結果が得られた。また、平成27年度に予定していた HSF2 転写複合体の構成因子の解明については、手法は異なるものの、ChIP-qPCR 法によって、重要な複数の構成因子がほぼ明らかになりつつある。また、HSF2 と WDR5 の相互作用を詳細に解析している途中で、この複合体が予想以上に生理的に重要な役割を持つことを示すデータをすでに得ており、研究成果は順調に上げられていると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、目標としていた分子メカニズムの解明にはかなり近づいている。このメカニズムをさらに詳細に解析しつつ、平成26年度は動物モデルを用いたデータを積み上げていきたい。 具体的には、先に HSF2-WDR5 転写複合体の構成因子を確定させ、これらが HSF2 と WDR5 の共通標的遺伝子群のプロモーター上でも存在することを明らかにしたい。特に、現在まで解析を進めてきた CRYAB は HSF1 の標的でもあり、HSF2 独自の機構を見出すため、今年度中に HSF1 非依存的な遺伝子群上でこの機構を明らかにしたい。 動物実験が遅れていることは反省点であり、今年度はここを計画的に進めてデータを得たい。平成24年度までの若手研究Bで行ってきた実験の一部がまだ検討の余地があると思われたため実験を継続しており、これも含めて、動物実験について一定の成果を得ることを常に念頭に置く予定である。
|