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2014 年度 実施状況報告書

疾患モデルを用いた熱ショック転写因子HSF2が形成する転写複合体の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 25430090
研究機関山口大学

研究代表者

林田 直樹  山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40420517)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードHSF2 / WDR5 / Set1/MLL / H3K4メチル化 / 変性タンパク質 / トランスジェニックマウス / ハンチントン病
研究実績の概要

平成26年度までに作成した2系統のヒトHSF2 (hHSF2) トランスジェニックマウスについて寿命を調べたところ、より hHSF2 を高発現する Tg2-8 系統において早く死亡する個体が見られたが、その後、hHSF2の発現レベルが低い Tg2-2 系統においても死亡する個体が出現し、1年後の生存率は、どちらの系統も50%と同じであった。
一方、Tg2-2 系統は♂♀ともに生まれたが、Tg2-8 系統では♂個体しか得られない特徴があった。また、いずれの系統も交配能力が低く、このままでは維持が難しいと考え、背景をこれまでの C57BL/6 から ICR へと変えたところ、2回バッククロスしただけの個体であっても半年たった現時点でも死亡個体は現れず、また、交配能力も通常の ICR と同等であるほか、Tg2-8 系統の♀も生まれるようになった。このメカニズムについては解析を行っていないが、近々薬剤を用いたハンチントン病モデルをこれらの系統で作成し、hHSF2 による保護効果を調べる予定である。
HSF2 の転写複合体の解析については大きく前進した。すでに昨年度に HSF2 がSet1/MLL 複合体に必須の因子である WDR5 と結合していることを見出していたが、WDR5 だけでなく、その他の RbBP5、Ash2L のほか、Set1、MLL1、MLL2 とも複合体を形成していることを突き止めた。また、RbBP5 と Ash2L は常に HSF2 と結合していたが、H3K4メチル化酵素である Set1、MLL1、MLL2 は遺伝子や条件によって結合する場合と結合しない場合があることを見出した。
このほか、WDR5 自体に細胞内変性タンパク質の蓄積を抑制する効果があることを発見した。このことは、HSF2 が持つ同様の効果が WDR5 との結合があることで発揮されている可能性を示唆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HSF2 の転写複合体の解析は予想以上に新たな発見が得られ、非常に順調に進んだだけでなく、新たな発見を生み出す可能性があると考えている。ヒトHSF2 のトランスジェニックマウスを用いた実験については、通常個体での寿命の結果と、ハンチントン病マウスと交配させた場合の寿命と両方のデータが得られたが、予想外に、Tg2-8 と掛け合わせたハンチントン病マウスで寿命の延長が見られなかった。この点については、今回用いたハンチントン病モデルマウスの寿命が16週と極端に短いものを用いており、効果が強すぎたため、これまで私たちが発表してきたような差を今回は見出せなかったと考えている。
メカニズムの研究は順調なため、平成27年度も問題なく進めることを期待している。

今後の研究の推進方策

平成27年度が最後の年度に当たるが、これまで多方面から行ってきた転写複合体のメカニズムの解析については、無理やり複数の方向に研究を広げず、これまでの知見をまとめて再現性などを確認し、平成27年度中にも論文の形で発表できればと思っている。
トランスジェニックについては、有効な結果が得られていないが、HSF(熱ショック因子)の研究の歴史の上で、脳で HSF を高発現するマウスを樹立できたのは私が初めてであり、ポジティブなデータではないが、少なくとも複数の結果が得られたことで、当該分野には貢献できたと考えている。最後に薬剤による実験を考えているので、ここで有効な結果が得られればと期待している。
WDR5 について平成26年度に得られた結果は非常に大きな発見であった。これについてはすでにデータがまとまっており、論文に現時点でのデータを掲載しても良いと考えている。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度、医師の診断により1月から3月まで(平成27年の1月から3月であるが、年度としては平成26年度)の90日間の病気療養を行ったため、3か月間実験を行うことが出来ず、そのため、支出額も減少した。

次年度使用額の使用計画

少々大変であるが、前年度の3か月分を消化するように実験の進行に努めたい。一方で治療は続いており、定期的に病院に通っているなど、体調を一定以上の良好な状態に維持するため、これまで使用していなかった効率的だが高価なキット等を利用して、予算を消化するとともに、研究計画の完了を目指したい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Mitochondrial SSBP1 protects cells from proteotoxic stresses by potentiating stress-induced HSF1 transcriptional activity.2015

    • 著者名/発表者名
      Tan, K., Fujimoto, M., Takii, R., Takaki, E., Hayashida, N., Nakai, A.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 6 ページ: 6580-6594

    • DOI

      10.1038/ncomms7580.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ATF1 modulates the heat shock response by regulating the stress-inducible heat shock factor 1 transcription complex.2015

    • 著者名/発表者名
      Takii R, Fujimoto M, Tan K, Takaki E, Hayashida N, Nakato R, Shirahige K, Nakai A.
    • 雑誌名

      Mol Cell Biol.

      巻: 35 ページ: 11-25

    • DOI

      doi: 10.1128/MCB.00754-14. Epub 2014 Oct 13.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Analysis of the Heat Shock Factor Complex in Mammalian HSP70 Promoter.2015

    • 著者名/発表者名
      Fujimoto M, Takii R, Hayashida N, Nakai A.
    • 雑誌名

      Methods Mol Biol.

      巻: 1292 ページ: 53-65

    • DOI

      doi: 10.1007/978-1-4939-2522-3_4.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Heat shock factor 1 is required for migration and invasion of human melanoma in vitro and in vivo.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Y, Fujimoto M, Fukushima S, Nakamura A, Hayashida N, Takii R, Takaki E, Nakai A, Muto M.
    • 雑誌名

      Cancer Lett.

      巻: 354 ページ: 329-335

    • DOI

      doi: 10.1016/j.canlet.2014.08.029. Epub 2014 Sep 3.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 熱ショック因子 HSF2 は Set1/MLL 複合体と相互作用する2014

    • 著者名/発表者名
      林田直樹、高木栄一、瀧井良祐、譚克、家村俊一郎、夏目徹、藤本充章、中井 彰
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [備考] ミトコンドリアの機能を保つ仕組みを解明

    • URL

      http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~seika2/Tan%202016/Tan2016.html

  • [備考] 代謝変化がプロテオスタシス容量を調節する仕組みを解明(医化学分野)

    • URL

      http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~seika2/kennkyuusuishin/Paper/Takii%202014/Takii.html

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公開日: 2016-05-27  

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