研究課題
3年間の研究期間において、研究代表者は Corresponding Author である3本の論文を含む8本の論文発表を行った。ここではその研究成果を、一部未発表のものも含めて記す。癌は言うまでもなく、最も早期に完治の治療法の確立が求められる疾患である。早期に発見できれば5年生存率がほぼ100%に近いものもある一方で、予後が非常に悪いものもある。遠隔転移をきたせば、どの癌であっても極めて予後不良で手術不適応である。そのため、内科的な完治の方法の樹立は早急の課題である。本研究では、代表者が新たな発見を積み重ねてきた熱ショック転写因子2 (HSF2) が、癌細胞においてどのような役割を持つかを調べ、さらに重要な分子機構を解明することに成功した。HSF2 は、ヒト子宮頸癌 HeLa 細胞およびマウス神経芽細胞 Neuro-2a の増殖において必須の因子であり、HSF2 をノックダウンするとこれらの細胞株の増殖が顕著に抑制された。また、HSF2 が結合しているタンパク質群の解析から、ヒストン H3 リジン 4 のトリメチル化を担う Set1/MLL 複合体の必須因子 (Core component) である WDR5 と HSF2 が直接結合していること、さらにこの HSF2-WDR5 の結合を介して Set1/MLL 複合体とも HSF2 が結合していることを突き止めた。また、上記の細胞株において WDR5 をノックダウンさせると増殖が顕著に減少し、さらに、WDR5 と結合できない HSF2 しか発現させないように操作した HeLa 細胞と Neuro-2a でも、顕著に増殖が抑制されることを突き止めた。このことは、HSF2 が癌細胞の増殖に極めて重要な役割を持つことを示しており、さらにそれが Set1/MLL 複合体との結合に依存していることが初めて明らかとなった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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