研究課題
基盤研究(C)
マウスは、実験動物として広く用いられている動物種であるが、近年、動脈硬化や糖尿病の病態がヒトと異なることが指摘されており、これらの研究分野ではマウス以外の疾患モデル動物の開発が望まれている。本研究では、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病において有用であると期待されているウサギについて、多くの研究者がバイオリソースとして活用できるよう、ヒト疾患モデルウサギの系統保存、供給のための拠点形成を目標とし、そのために必要となる基盤技術の整備として、ウサギにおける胚凍結手技ならびにその関連技術の開発・確立を行う。平成25年度は、主に新規凍結保存液の開発と胚凍結条件について検討を行った。その結果、凍結保存液(エチレングリコールとDMSOの混合液)に不凍タンパク質(AFP)を添加することにより、凍結融解後の胚の発生率が向上する事を見いだした(論文投稿準備中)。ただし、添加するAPFの濃度には至適濃度が存在し、AFPを高濃度で添加した場合は無添加の対照群よりも凍結融解後の発生率は低下した。今後は、さらに胚移植を行った場合の妊娠率、産仔数などへ及ぼすAFPの影響についても確認する必要がある。また、内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立についても検討を開始した。通常、胚採取、胚移植においていは麻酔下で正中もしくは側腹部を切開し外科的に採取、移植を行う。切開を行うと手術後癒着が生じる場合が多く、ドナーおよびレシピエントともに1回しか実験に使用できない場合が多い。そこで、低侵襲で癒着を生じにくい方法として、内視鏡手術による胚採取、胚移植手技について検討を行う。これにより、胚採取にあたり動物を安楽死せずに繰り返し採取する事が可能、また、低侵襲により胚移植手術後のストレスが軽減し、妊娠率の向上等が期待できる。これらの検討は、動物使用数削減、動物への苦痛軽減など動物福祉に貢献する。
3: やや遅れている
大がかりな動物実験施設改修工事に伴う飼育器材の移設、飼育スペースの制限等により、実験に必要なウサギの飼育数、実験室を確保できず、特に、内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立の検討が予定通りに実施できなかった。
平成26年度は、大学院生(修士)1名を研究協力者として加え、以下の研究を進める予定である。1)新規凍結保存液の開発と胚凍結条件の検討:引き続き、胚凍結条件の検討を行うとともに新たな保存液の探索を継続する。2)内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立:引き続き、内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立に関する検討を進める。3)凍結精子を用いた体外受精、胚凍結:先行して実施した精子の凍結保存技術の確立より、すでに我々が維持するウサギ系統のいくつは凍結精子に系統保存されている。すでに凍結精子により保存されているウサギ系統について、凍結精子から効率よく胚を得る条件を検討する。凍結保存された精子から多くの受精卵(胚)を得るためには、体外受精による方法が効率的であると考えられる。人工授精が十分に出来ない精子量でも受精卵を得る事が可能となることが期待される。
大がかりな動物実験施設改修工事に伴う飼育器材の移設、飼育スペースの制限等により、ウサギの飼育室、実験室を十分に確保できず、予定通りに実験が実施できなかったため、この分の執行残が生じた。次年度は、研究協力者名に大学院(修士)1名を追加し、前年度に実施完了できなかった実験計画を合わせて実行する。次年度使用額はこの分に使用する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=2
http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=13