研究課題
マウスは、実験動物として広く用いられている動物種であるが、近年、動脈硬化や糖尿病の病態がヒトと異なることが指摘されており、これらの研究分野ではマウス以外の疾患モデル動物の開発が望まれている。本研究は、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病において有用であると期待されているウサギについて、多くの研究者がバイオリソースとして活用できるよう、ヒト疾患モデルウサギの系統保存、供給のための拠点形成を目標とし、そのために必要となる基盤技術の整備として、ウサギにおける胚凍結手技ならびにその関連技術の開発・確立を目的とする。これまでに、ウサギ胚の凍結保存に使用する凍結保存液の検討を行ってきたが、H26年度は、凍結保存に用いるデバイスについて凍結手技の比較検討を行った。クライオチューブ、セルスリーパーおよびクライオトップの3種類を試したところ、クライオトップによる超急速ガラス化法が融解後の胚発生率が最も高いことがわかった。さらに、これまで凍結保存液としてに主に検討してきたDMSOとエチレングリコールの組み合わせよりもフィコールとエチレングリコール(EFS)を用いた場合、融解後の胚発生率が劇的に向上する事を見出した。H25度に検討した不凍タンパク(AFP)の添加に比較してもより簡便で同等以上の成績であった。現在、EFSとクライオトップによる超急速ガラス化法で凍結したウサギ胚の凍結融解後の移植成績について検討を行っているところである。今後、ウサギ胚凍結において、EFSとクライオトップを用いた方法が最も実用的な手技となることが期待される。今後の計画として、WHHL MIウサギなどの疾患モデルの提供を受け、実際に凍結胚による系統保存作業を進めていく予定である。
3: やや遅れている
胚凍結保存液および凍結保存手技の確立は順調に進んでいるが、内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立についてやや難航している。今後、若干の工夫が必要と考えられる。
胚凍結保存液および凍結手技の検討については、ほぼ終了したと考えられることから、今後は、実際に胚凍結による疾患モデルウサギの系統保存を進めて行く。また、先行してすでに我々が確立した精子凍結技術により我々が維持するウサギ系統のいくつは凍結精子で系統保存されている。これら凍結精子から効率よく胚を得る方法として、凍結精子を用いた体外受精の条件を検討する。人工授精が十分に出来ない精子量でも体外受精を行うことで、効率よく胚を得る事が可能となることが期待される。さらに、内視鏡を用いた胚採取、胚移植技術の確立についても検討を進めていく予定である。
本年度に計画していた実験に関して、実験に適した週齢のウサギを年度内に入手する事ができなかったため、その分のウサギ購入費用が残額として残った。
残額については、次年度に実験に適した週齢ウサギが得られ次第すみやかに執行する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Pharmacology & Therapeutics
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http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=13
http://www.animal.med.saga-u.ac.jp/index.php?id=2