研究課題/領域番号 |
25430092
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉信 公美子 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 助教 (20274730)
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研究分担者 |
荒木 正健 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (80271609)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子発現 / 性差 / 遺伝子改変マウス / 遺伝子トラップ / X-gal染色 |
研究実績の概要 |
我々は、個体レベルでの遺伝子機能の解明を目指し、可変型遺伝子トラップ法により多くの遺伝子改変マウスを作製してきた。可変型遺伝子トラップマウスの解析を進める中、成体臓器において発現に性差を示すラインを見出した。本研究テーマでは、可変型遺伝子トラップマウスを利用して性差発現を示す遺伝子の機能解析を行い、性差の背景を明らかにすることを目指している。 1.遺伝子トラップラインのX-gal染色解析から発現に性差を認めた遺伝子の候補は、Tcf12, Ube3, Elovl6, βt4galt5, Rai14, Smyd2, 6720401G13Rik, CJ142626の8遺伝子である。転写レベルの性差が見られるのか、これらの遺伝子発現をRT-PCRで解析した。しかし、転写レベルではX-gal染色で得られたような明らかな性差を確認することができなかった。 2.複数の臓器において性差が見られたSmyd2トラップラインを用いて、個体レベルでの解析を行った。使用しているラインはC57BL/6系統とCBA系統のF1であるTT2 ES細胞から樹立された雑種である。近交化のためC57BL/6に戻し交配しN6以上の世代での解析を行ったところ、当初得られた結果と異なり、X-gal染色及びRT-PCR、qRT-PCRにおいても性差は確認できなかった。 3.H27年度は、Elovl6トラップラインを凍結胚から起こし、再度X-gal染色を実施し、肝臓と白色脂肪で顕著な性差(♀>♂)を確認した。個体レベルでの解析はElovl6トラップラインに焦点を絞ることとした。Elovl6は脂肪酸の伸長を行う酵素であり、脂肪酸合成において雌雄で差がある可能性が示唆された。今後、Elovl6関連因子にも発現性差があるのか、今回見られた成体臓器の発現性差が性ホルモンの影響によるものかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画を変更して進めているため。 X-gal染色の再検証において、当初見られたようなSmyd2遺伝子の発現性差が見られず、再検証において性差を認めたElovl6に焦点を当てて進めることにした。複数の世代と匹数を増やして再検証を行ったことや既に凍結したマウスラインを解析するため凍結胚を起こすなどの時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
Elovl6遺伝子トラップマウスを用いたX-gal染色による発現解析で、Elovl6遺伝子が成体の肝臓と白色脂肪において、雌が雄よりも明らかに発現が強いことがわかった。今後、Elovl6遺伝子の発現性差をRNAレベル、タンパクレベルで示し、Elovl6関連因子についても発現性差があるのか、解析を進める。また、成体臓器での発現性差が性ホルモンの影響によるものか検討するため、マウスにエストラジオールやテストステロンを投与し、Elovl6の発現が変化するかを検討する。これらの解析を推進するため、技術補佐員の協力を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
Elovl6遺伝子の発現性差をH28年度にも解析するよう計画したため。 前述したように、Smyd2遺伝子トラップマウスにおいてX-gal染色の再検証を行ったところ、当初観察された性差は認められなかった。そこで次に性差が顕著であったElovl6に焦点を当てた。
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次年度使用額の使用計画 |
補助金は、主に消耗品費として使用する。 マウス成体の肝臓と脂肪において、Elovl6遺伝子の発現解析をRNAレベル(qRT-PCR, in situハイブリダイゼーション)およびタンパクレベル(ウェスタンブロッティング、免疫組織化学染色)で行い、X-gal染色以外でも発現に性差があることを示す。Elovl6関連遺伝子についても、発現変化をqRT-PCRにより解析する。試薬はこれまでに購入済みであるが、不足分を追加で購入する。成体臓器における性ホルモンの影響によるか解析するため、エストラジオールやテストステロンを投与する。これらのホルモンを購入する。
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