昨年度までの研究で得られた結果から、高学習能を支える多くの分子やタンパク質が示唆された。最終年度は、表現型に最も近い物質である代謝産物に着目するため、メタボローム解析による網羅的な代謝産物の検討を行った。低学習能と高学習能を示すWistarラットの海馬組織を用いて比較したところ、ポリアミン類の代謝産物の一つに著明な差を見出すことに成功した。加えて、THAラットに特徴的な代謝産物は、必須アミノ酸や抗酸化酵素に関連した物質であった。高学習能WistarとTHAラットの両グループにおいて共通して亢進している代謝産物は少なく、THAラットに特徴的に認められる代謝産物の増加は、高学習能を含めたTHAラット独自の表現型を規定していることが示唆された。
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