研究課題
本研究は、マウス西欧産ドメスティカス亜種由来のB6系統と日本産モロシヌス亜種由来のMSM系統、およびこれらより樹立されたコンソミック(染色体置換)系統群を利用して、生体エネルギー代謝に関わる組織を対象に、NGSによる遺伝子発現解析を行い、「遺伝子発現量の違い」と「ゲノム配列上の発現部位」の解析や「翻訳されるタンパク質に変化をもたらすRNA編集の亜種間差」を探索して、エネルギー代謝表現型に関わる量的形質遺伝子の単離・同定へつなげることを目的としている。本研究期間内に、B6およびMSM系統、さらにはエネルギー代謝関連表現型に差のあるコンソミック系統を対象にして、エネルギー代謝表現型解析とNGSによる遺伝子発現解析を行った。得られた遺伝子発現情報は、B6あるいはMSMのゲノム情報をリファレンスとして使用し、各系統の遺伝子発現量の特徴を解析した。これにより、亜種間で発現量が異なる遺伝子群をリストアップすることができた。RNA-seq解析、および結果のDDBJへの登録については、新学術領域研究「ゲノム支援」の支援を受けた。情報解析について、2次および3次解析の一部は、遺伝研スーパーコンピュータシステムを利用した。また、情報解析の一部は新潟大学大学院自然科学研究科、阿部研究室の協力を得た。本研究の結果、遺伝子発現の標記各系統間の差およびRNA編集受容候補塩基の座標に関する情報を得た。RNA編集受容候補塩基に関しては、既知のRNA編集受容遺伝子も検出することができた。B6、MSMおよびコンソミック系統とも、RNA編集の候補塩基は遺伝子発現差に関係なく多数観察された。さらに、遺伝子機能に関する情報解析を行った結果、転写や代謝、筋骨格組織発達の調節に関する遺伝子群に差が観察された。標記遺伝子発現差とエネルギー代謝表現型の系統間差については、各種の検証による関連性の調査を継続して行っている。
すべて 2016 2015
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