研究課題
基盤研究(C)
本研究ではヒト造血幹細胞にて免疫系を再構築したヒト化マウスを用いて、様々なアレルゲンに対するアレルギー反応を起こすヒトアレルギーモデルの開発を目的としている。申請者が開発したNOG human IL-3/GM-CSF Tgマウス(NOG hIL3/GM-Tg)は、造血幹細胞移植後にヒトマスト細胞、好塩基球への分化効率が高く、in vivoでこれらの脱顆粒を惹起できるヒト化マウスである。平成25年度は、抗原特異的IgEを含む花粉症患者の血清と花粉抽出液をヒト化NOG hIL3/GM-Tgマウスへ投与し、受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応が惹起されるかを検討した。その結果、ヒト化NOG hIL3/GM-Tgマウスの皮膚において、極めて顕著な脱顆粒が観察された。一方、ヒト化nonTgマウスでは少量の脱顆粒が起こる程度であり、非ヒト化NOGマウスでは脱顆粒は全く観察されなかった。以上の事から、hIL3/GM-Tgマウスはin vivoでヒトアレルギー応答を再現できるモデルであり、抗アレルギー薬の薬効や安全性を評価する系として有用である可能性が示された。また、本TgマウスにさらにヒトIL-33遺伝子を導入したトリプルTgマウスを作製し、高感度アレルギーモデルの作出を計画している。平成25年度は、既に得られているファウンダーをNOGマウスにバッククロスし、NOGマウス背景のトリプルTg系統を樹立した。加えて、能動的アレルギー応答を可能にするヒト化マウスを開発するために、HLA-DR4遺伝子を導入し、ヒトT細胞の機能強化を図るモデルも作製中である。平成25年度はNOG hIL3/GM-TgマウスとHLA-DR4 Tgマウスとの交配により、IL3/GM/DR4 Tgマウスの樹立に成功した。平成26年度では、これらTgマウスをヒト化して解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は主に以下の計画にて研究を遂行した。1)hIL3/GM Tgマウスを用い、花粉症患者血清および花粉抗原によるPCA反応が見られるか検討する。2)hIL3/GM/IL-33 Tgマウスをマイクロインジェクションにより作製し、NOG背景に置換させる。3)hIL3/GM TgマウスとHLA-DR4 Tgマウスとの交配により、IL3/GM/DR4 Tgマウスを樹立する。1~3の全てにおいて、申請書に記載した計画通りに進んでいるため、本研究は概ね順調に進展していると言える。なお、1)の成果を含めた研究内容に関しては、Journal of Immunologyに投稿し、アクセプトされた。
平成25年度で樹立した2系統のトリプルTgマウスの評価を行う。1. 各トランスジェニックマウスへヒト造血幹細胞を移入し、好塩基球・マスト細胞の分化を確認した後、PCA試験を行う。2. hIL3/GM-CSF/HLA-DR4 Tgマウスへ花粉、ダニ、ハウスダストなどのアレルゲンを免疫してIgE抗体の測定を行い、鼻粘膜、眼粘膜への当該アレルゲンの滴下によりアレルギー症状が惹起されるか検討する。3. PCA試験または粘膜へのアレルゲン滴下によりアレルギー症状が観察された系統を用いて減感作療法を行う。当該のアレルゲンを飲水または食餌に混在させてマウスに継続的に与え、経口免疫寛容によるアレルギー反応の抑制が起こるか検討する。また最近新たな系統として、hIL-5 Tgマウスを作製し、hIL3/GM/IL5トリプルTgマウスを樹立した。本系統はヒト好酸球が効率よく分化するため、これを用いた好酸球性喘息モデルの開発にも着手する。
申請段階では2回分の国際学会の旅費を支出に含めた計画を立てていたが、これらが他の研究費にて支出可能であったため、当該の旅費分は今年度使用しなかった。次年度以降の実験動物を含めた消耗品費および旅費としての使用を計画している。
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Experimental Hematology
巻: in press ページ: in press
0.1016/j.exphem.2014.02.001
Journal of Immunology
巻: 191 ページ: 2890-2899
10.4049/jimmunol.1203543
Immunology Letter
巻: 154 ページ: 12-17
10.1016/j.imlet.2013.08.005