研究課題
基盤研究(C)
近年の癌化学療法は新規抗癌剤・分子標的薬の開発導入などめざましい進歩を遂げており、以前には考えられない程の延命が可能になってきている。最近では腫瘍周辺環境における慢性的な炎症が腫瘍の進展、転移に影響を与えることが報告されており、これらの分子をターゲットにした薬剤開発が急がれている。この研究の目的は腫瘍環境における慢性炎症の役割を明らかにし、治療の新しいターゲットの発見につなげることである。1) 大腸癌検体(約100検体)から得られたサンプルを用いてマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、腫瘍環境における慢性炎症と抑制性の分子・サイトカインの発現パターンを解析した。その中から癌の発症や予後に関わると予想される遺伝子をピックアップしている。2) マウスMDSCはTLR9 LigandであるCpG ODNの刺激によって腫瘍を攻撃するマクロファージへ分化誘導されることを過去に我々は報告した。同様な現象がヒトMDSCにも観察されるか実験を行っている。倫理委員会の承認を取得し、癌患者からインフォームドコンセントを行い得られたPBMCを用いミエロイド由来抑制性細胞(MDSC)を分離し解析している。様々なToll Like Receptor(TLR)Ligandで刺激し免疫応答を解析し、M1型のマクロファージへ分化するか観察している。ヒトMDSCにはTLR9の発現がなくCpG ODNに反応しないことがわかったが、他のいくつかのTLRの発現があり、これらのLigandの刺激でマクロファージに分化誘導できることが判明した3) 担癌マウスを用いたスクリーニング解析から癌細胞を早期に認識するユニークなT細胞群を発見した。このT細胞群が腫瘍微小環境にどのような影響を与えるか観察している。
2: おおむね順調に進展している
1)大腸癌臨床検体からのマイクロアレイにて腫瘍免疫の観点から発現パターンを解析している。2)ヒトMDSCにフォーカスをあて実験している。3)マウスモデルを使った実験から興味深い細胞群を同定している。
1)マイクロアレイから得られた新しい知見からフォーカスを絞り詳細に解析していく。大腸癌検体のスライドをさらに共同研究者から取り寄せ、免疫染色を行っていく。大腸癌に浸潤したマクロファージのサブタイプの違いによって予後(再発、生存期間)と関連を解析する。さらに癌の組織形の違いとの関連も調べる。2)TLR ligand によるMDSCのマクロファージ分化についてメカニズムを解析していく。分化の詳細なメカニズムを解析し、どのPathwayを刺激することでマクロファージへ分化するか解析する。刺激後に分化したマクロファージはどのような性格を持つか(T細胞の抑制能力が消失しているか、抗腫瘍効果を持っているか)を詳細に調べる。3)マウスモデルより得られた腫瘍を早期に認識するT細胞を確認している。同様の現象がヒトの癌患者からのリンパ節検体に存在するか確認する。マウスを用いたトランスレーショナルスタディーをさらに進め、このT細胞の腫瘍進展に対する役割(抗腫瘍効果か、腫瘍浸潤促進効果か)を解析する。
前述のとおり、研究はおおむね計画通りに進行しており、学会発表へ繋がっている。実験に使用を予定していたマウスの供給が間に合わず、それにより一部進行していない状態があったため、次年度使用となった。充分なマウスの供給が得られることとなったため、今後は計画通りに研究を進めていく。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
J Autoimmun.
巻: 53 ページ: 33-45
Expert Rev Vaccines.
巻: 13(2) ページ: 299-312
Methods Mol Biol.
巻: 1139 ページ: 337-344
10.1016/j.jaut.2014.02.003.
Immunotherapy
巻: 5(8) ページ: 787-789
10.2217/imt.13.70.
J Immunol.
巻: 191(2) ページ: 865-874
10.4049/jimmunol.1201648.
http://www.breastcancerstartupchallenge.com/2-immunotherapy-using-modified-self-tumor-cells.html
http://ncifrederick.cancer.gov/about/theposter/content/creating-start-companies-around-nci-inventions