研究課題/領域番号 |
25430107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
大島 浩子 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80362515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | SOX17 / 消化器がん / 粘膜下浸潤 / 炎症 |
研究概要 |
SOX17は、HMGボックスを持つSOXファミリーに属する転写因子である。SOX17は、Wntシグナルを抑制性に制御する機能が報告されている。また、大腸がん細胞でSOX17遺伝子を強制発現させると、Wntシグナルの低下にともなって腫瘍原性が低下するという報告から、SOX17は、がん抑制遺伝子として機能する可能性が示唆されている。一方で我々は、これまでにマウスモデルを用いた研究結果から、Apc遺伝子欠損により発生する良性の腸管腫瘍細胞でSOX17の発現上昇が認められるが、ApcとSmad4の複合遺伝子変異により発生する悪性化した浸潤性の腸がん細胞では、SOX17の発現が低下する現象を発見した。さらに、我々は浸潤過程においては、慢性炎症による炎症性微小環境の形成が重要である事を示す予備的結果を得ている。本研究課題では、SOX17の欠損と炎症反応の相互作用による腫瘍の悪性化機構を解明する事を目的とする。今年度は、SOX17欠損マウスを用いて、炎症反応依存的な大腸がん発がん実験を行った。AOMとDSSを連続的に投与したマウスでは、beta-catenin遺伝子変異の導入と、潰瘍性大腸炎の相互作用により腸管腫瘍を形成する。SOX17遺伝子をvillin-CreERマウスと交配し、タモキシフェン(Tmx)投与によりSOX17を腸上皮で欠損させたマウスを作製して、AOM/DSS投与を行うと、SOX17遺伝子野生型マウスと同様の大腸腫瘍を発生した。すなわち、SOX17遺伝子欠損は、初期の炎症発がん過程には関与していない可能性が示された。また、次年度解析のため、炎症依存的に浸潤性の腸がんを発生するTgfbr2のコンディショナル欠損マウスと、SOX17欠損マウスとの交配を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症依存的な腸管腫瘍発生過程では、SOX17遺伝子欠損は関与しない事を示す事が出来た。この結果を踏まえて、浸潤性腸がん発生モデルにおけるSOX17遺伝子欠損の影響についての研究へと進める。一方で、当初計画したSOX17遺伝子欠損マウス由来腸上皮細胞の3次元オルガノイド培養実験は、まだ成果が得られていないが実験系の確立による準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
SOX17による炎症依存的ながん悪性化機構を解明するため、Tgfbr2 (flox/flox) SOX17 (flox/flox) villin-CreERマウスを作製する。TGFbetaシグナル遮断したマウスに粘膜傷害による慢性炎症を誘導すると、浸潤性大腸がんが発生する。このマウスモデル系を用いて、でSOX17遺伝子が欠損した時に、粘膜下浸潤能や浸潤した腫瘍細胞の増殖や先祖んへの影響について、病理組織学的に解析し、同時に遺伝子発現プロファイルの比較解析を行う。また、SOX17遺伝子の有無による、マトリゲル中の浸潤能の変化を、マウス由来腸上皮細胞を用いたオルガノイド培養実験により解析し、SOX17欠損による上皮細胞側の浸潤能の変化について明らかにする。
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