腎癌由来のRCC4細胞はデオキシグルコース(2DG)とABT-263のコンビネーションが効きにくい細胞です。その理由を調べるとVHLという遺伝子が欠如しているためインスリン・ライク増殖因子1(IGF1)の受容体の蛋白が安定化されている事もわかりました。この受容体の阻害剤を2DG・ABT-263のコンビネーションに加えると大変効率よくRCC4細胞は細胞死に誘導されました。 しかしIGF1Rの阻害剤は臨床ではあまり効き目がない事も知られています。その理由の一つには腎癌を含むがん腫瘍のなかにはIGF1Rが過剰発現されているだけではなくEGFR及びインスリン受容体も発現している細胞もあり、IGF1Rと多数の同じような酵素を細胞内で活性化しています。よってRCC4細胞は死んでもこれらの細胞が腫瘍内で生き延びます。このIGF1Rによって活性化された多くの蛋白のうち、どれが2DG・ABT-263の細胞死誘導を阻害しているか調べてみるとAKTと言う酵素だとわかりました。しかしAKTは健康な細胞でも活性化しており、この阻害剤のおおくは多大な副作用があります。そこで我々はbeta-cyclodextrin(bCD)というコレステロールをターゲットにした薬でAKTの活性化を細小の副作用で抑制できる事を発見しました。この薬の効果はネズミに注射した時、約4時間と言う事も試験でわかりました。この4時間のあいだに2DG・ABT-263を投与するとがん細胞が細胞死に誘導されました。このため腎癌由来のがん細胞をネズミに移植し、bCD・2DG・ABT-263のコンビネーションで治療するとがん腫瘍の萎縮がみられました。これが Febs Lettersに記載された論文です。この時に細胞内でなにがおこるかの分子レベルでの解析は他の論文にまとめTumor Biologyで出版が決まっています。さらにbCD・2DG・TRAILという三つの薬が膵臓がん由来の細胞に非常に良く効く事も発見しました。
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