研究課題/領域番号 |
25430109
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
石崎 敏理 大分大学, 医学部, 教授 (70293876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞悪性化 / 細胞骨格 / アクチン / mDia / 化学発癌 |
研究概要 |
2段階化学発癌モデルをC57BL/6背景のアクチン重合因子であるmDiaの遺伝子欠損マウスに供することにより、mDiaの発癌への寄与を見出しているが、本モデルは、特に用いるマウスの遺伝背景に影響を受けることが報告されている。そこで、本モデルで再現性が高いことが報告されているFVB背景へのbackcrossを完了させ、現在、FVB背景のマウスを用い再現性を確認している。またmDiaのアイソフォームの1つであるmDia2は、細胞質分裂に主として機能することを明らかにしてきたが、今回、mDia2の遺伝子欠損マウスを作出し、mDia2の個体での機能について解析した。その結果、mDia2欠損マウスは、胎生期11.5日で重篤な貧血状態となり、12.5日で致死となる。mDia2の正常に分化した赤血球は一部観察されたが、胎児赤血球数は減少しており、それら細胞の中には高頻度で細胞質分裂異常による二核化細胞が観察された。この結果からmDia2は個体においても細胞質分裂を調節しており、赤血球産生に重要な役割を果たしていることが判明した(Cell Rep. 5, 926-932 (2013)。 また、細胞内輸送に関わるRab27aのGDP結合型に特異的に結合する分子としてIQGAPを同定した。IQGAPをRNAi法により枯渇させると、Rab27aやRab27a結合タンパク質coronin3の細胞膜局在が抑制された。さらに、その生理的意義を膵臓B細胞においてインスリン顆粒放出について解析したところ、これらのタンパク質の相互作用はインスリン顆粒放出以降の細胞膜回収に関わるエンドサイトーシスを調節していることが判明した(Mol. Cell. Biol 33, 4834-4843, 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いた実験は、再現性を確認するために、C57BL/6背景からFVB背景に戻し交配を行ったため、時間を費やしたが、個体レベルでの解析は現在進行中である。また癌化した組織解析を行い、Ras下流分子の活性化レベルをmDiaの有無により検討を行っている。その間、培養細胞をもちいた癌化のアッセイ系を立ち上げ、現在活性変異型Ras発現による細胞悪性化へのmDiaの関与について検討を重ねている。個体での結果と細胞レベルでの解析との整合性をとったうえで、より詳細な分子機序の探索を可能にすると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、mDiaが癌化に果たす役割を解析するために、癌化の責任細胞の同定を行っていく予定である。このモデルでは、遺伝子変異をDMBAで起こさせたのちに、TPAで炎症を惹起し、papillomaを形成させるものであり、mDia欠損マウスで観察されている癌化(もしくはpapilloma形成)の抑制は、その変異を有した細胞それ自身に起因するのか、もしくは、炎症刺激に応答する免疫担当細胞に依るものなのかを明らかにする必要があると考えている。したがって、具体的な方策としては、ケラチノサイト特異的発現CreマウスまたはT細胞特異的CreマウスとmDia Floxマウスとを掛け合わせを行い、ケラチノサイトもしくはT細胞特異的にでmDiaを欠損したマウスを作出する。それらマウスに対して前述の2段階化学発癌モデルを供し、その責任細胞の同定を試み、mDiaの癌化に果たす役割について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定の動物の入荷が2013年度内に納品が間に合わず、2014年度での購入繰り越しとなってしまったため、使用額に差が生じた。 遺伝子改変マウス(LcK-Creマウス)の購入
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