研究課題/領域番号 |
25430109
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
石崎 敏理 大分大学, 医学部, 教授 (70293876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Rho / mDia / アクチン細胞骨格 / 癌化 / Ras |
研究実績の概要 |
本課題ではmDia遺伝子欠損マウスにDMBA/TPA投与塗布による皮膚発ガンモデルを用い、細胞悪性化・腫瘍化に果たすRho-mDiaシグナリングの役割およびその分子機序を解析する。 本モデルは遺伝子背景に強く依存し、FVB背景のマウスでは再現性よくパピローマ形成が認められることが確認されている。そこでC57/B6背景のmDia遺伝子欠損マウスをFVBの遺伝子背景に戻し、DMBA/TPA投与塗布による皮膚発ガンモデルを実施した。その結果、パピローマが野生型、mDia1ヘテロ(HT)マウスにおいてはTPA塗布後約6週目から形成され始めるのに対し、mDia1ノックアウト(KO)マウスでは10週以降に形成され始め、パピローマ形成時期が著しく遅延することが判明した。また、その後20週までTPAを塗布し続けた結果、1匹当たり形成されたパピローマ数も、野生型では11.0±3.74個、HTマウスでは10.5±5.02個に対し、mDia1KOマウスでは1.75±0.83個と著しい差を認めた。さらに、パピローマの大きさも野生型が直径4㎜以上のものが全体の約4割に達しているのに対し、HTマウス、KOマウスでは直径2㎜のものがそれぞれの全体の3割、6割と最も多かった。加えて、KOマウスでは3㎜以上のものが認められなかった。これらのことから、本モデルにおいてmDia1はパピローマ形成およびその生長に深く関与していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivoにおける全身性mDia1欠損マウスを用いたRho-mDia1情報伝達経路の癌化への影響に関して、mDia1のパピローマの生長に強い関与が示された。これはRhoシグナリングの癌化に果たす役割を検証するうえで極めて重要な知見であり、系の確立ができたものと考える。その理由として、これまでの研究ではin vivoで Rhoシグナリングが癌細胞の浸潤転移に関与することを示した報告はあるが、癌化への関与を示した論文はほとんどないことがあげられる。現在、さらにどの細胞のRhoの活性化が癌化に寄与するのかを検討するため、ケラチノサイト特異的Creマウス(Involucurin―Creマウス、K5-creマウス)との交配を行っており、本年度内に結果が得られる予定である。また、近年アクチン細胞骨格再編成と転写に注目が集まっている。本課題ではその点も考慮し、Rhoシグナリングがアクチン細胞骨格再編成を介して転写が調節された結果、細胞が癌化されるのではないかということが示唆されている。そのため、現在、本モデルを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行っている。現在、結果を解析中であり、Rhoシグナリングと癌化がどのような機序で結びついているのかが明らかにできるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1. ケラチノサイト特異的mDia1欠損マウスに本モデルを実施することにより、ケラチノサイトでのmDia1の機能がパピローマ形成および生長への関与を検討する。(平成27年度中に実施予定) 2. パピローマ部位よりmRNAを単離し、gene chipを用いて遺伝子発現に差が認められるかを検討する。(平成27年度中に完了予定) 3. DMBA塗布によりRasに変異が入ることがパピローマ形成に不可欠である。そこで、DMBA/TPA塗布後パピローマ形成部位よりケラチノサイトを単離し、Rasを介する情報伝達経路(MAPK-, PI3K-, RalGDS-pathway)のうち、mDia1により制御を受けている情報伝達経路の同定を行う。また、パピローマ部位より単離したケラチノサイトをヌードマウスに移植し腫瘍形成能に差が生じるかを検討する。(平成27年度中に完了予定)
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの購入を計画していたが、年度内に納品が困難で次年度での購入に変更したため
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次年度使用額の使用計画 |
T細胞でのmDia1欠損が癌化に果たす役割を検討するためT細胞特異的Lck-Creマウスを購入し、mDia1 floxマウスをかけあわせ、DMBA/TPAモデルを実施する。
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