研究課題
低分子量GTP結合タンパク質Rhoは様々な臨床がんに関与していること、またin vitroでは、RhoシグナリングはRasの下流で機能し、細胞悪性化に関与していることが報告されている。しかしながら、Rhoの下流標的タンパク質のうち、どの標的分子が細胞悪性化に寄与しているかは不明であった。本課題では、変異Rasにより腫瘍化するモデルである、DMBA/TPA化学発癌モデルにおいて、Rho標的タンパク質mDia1の腫瘍化への寄与およびその機序を調べる目的で研究を行った。mDia1ヘテロマウス(mDia1+/-;mDia1HT)の同士の交配により得られた同産仔のマウス(WT, HT, KO)にDMBAを塗布後、TPAを反復塗布したところ、WT、HTマウスに比べてmDia1KOマウスでは、パピローマ形成時期の遅延を認め、形成されたパピローマ数、サイズの減少が観察された。次に、in vitroにおいて細胞悪性化におけるmDia1の役割を調べるために、oncogenic Ras発現培養細胞を用いて、癌細胞の特性の1つである足場非依存性増殖へのmDia1の寄与とその分子機序を解析した。siRNAによりmDia1を枯渇させた細胞では軟寒天培地内での対照細胞と比して増殖能が著しく低下していた。さらにoncogenic Ras発現培養細胞ではTPAによりMEK-ERK-p90RSK経路が活性化されるが、mDia1枯渇細胞ではMEK-ERK-p90RSK経路の活性化が抑制されていることを見出した。mDia1枯渇によるこの経路の抑制は足場依存性増殖時では抑制されなかったことから、細胞がRasにより悪性化した時に特異的に機能することが判明した。これらの結果から、この結果からRho下流標的タンパク質の中でmDia1が変異Rasによる腫瘍化に関与していることが判明した。
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