研究課題/領域番号 |
25430112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
押川 清孝 九州大学, 生体防御医学研究所, 研究員 (50380051)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 |
研究概要 |
われわれが開発した『情報基盤定量法(iMRM)』は多数のタンパク質の絶対量を同時に測定する新技術である。本研究では、このiMRMを用いてがん細胞特有の現象である好気条件下での解糖亢進(ワールブルグ効果)の代謝機構解明を目指している。 平成25年度は、約1,000種類の代謝酵素の組換えタンパク質を小麦胚芽抽出液を用いた無細胞発現系により作製し、その消化物を用いてLC-MS/MS解析によって感度良く検出されるペプチドの選定とその座標(LC上の保持時間、質量、および部分質量)の決定を行った。現在、取得した全代謝酵素の消化ペプチド情報を基にiMRMのための最適化を行っている。 一方、iMRMに供するがん化モデル細胞の樹立も行った。ヒト胎児肺由来の正常二倍体線維芽細胞にレトロウイルスによりがん遺伝子を導入することで、各種がん化モデル細胞を作製した。樹立したがん化モデル細胞は、細胞形態が劇的に変化し、増殖能が著しく上昇していた。また、がん細胞の特徴である足場非依存的増殖能を獲得しており、さらにワールブルグ効果も確認することができた。今後は、情報基盤定量法に加え、トランスクリプトーム解析やメタボローム解析を行うことでがん化モデル細胞特異的な代謝機構およびワールブルグ効果の主因代謝酵素の特定を試みる。また、得られた代謝物および転写産物の定量情報を統合し、バイオインフォマティクスによる新規の知識発見や仮説形成を行い、これをもとに実証実験を遂行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、約1,000種類の代謝酵素の組換えタンパク質の作製がすでに終了している。現在は、それら消化物を用いてLC-MS/MS解析によって取得した全代謝酵素の消化ペプチド情報を基にiMRMのための最適化を行っており、もうすぐ終了する予定である。また、iMRMに供するがん化モデル細胞の樹立にも成功し、ワールブルグ効果も確認することができた。よって本研究計画は順調に進められていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降では、iMRMに加え、トランスクリプトーム解析やメタボローム解析を行うことでがん化モデル細胞特異的な代謝機構およびワールブルグ効果の主因代謝酵素の特定を試みる。また、得られた代謝物および転写産物の定量情報を統合し、バイオインフォマティクスによる新規の知識発見や仮説形成を行い、これをもとに実証実験を遂行する予定である。
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