研究実績の概要 |
われわれが開発した『情報基盤定量法(iMRM)』は多数のタンパク質の絶対量を同時に測定する新技術である。本研究では、このiMRMを用いてがん細胞特有の現象である好気条件下での解糖亢進(ワールブルグ効果)の代謝機構解明を目指している。 前年度までに取得した約1,000種類の代謝酵素の消化ペプチド情報を基にiMRM測定のための条件最適化が完了した。平成27年度は、樹立したがん化モデル細胞を用いてiMRMやトランスクリプトーム解析やメタボローム解析を実施した。得られた大規模データから、がん化特異的に上昇する代謝酵素群を抽出し、ワールブルグ効果の主因代謝酵素の特定を行った。これらの中で、GPI(glucose-6-phosphate isomerase), PFKM(phosphofructokinase, muscle), LDHB(lactate dehydrogenase B)を単独で正常細胞に過剰発現させると、好気的条件下でのグルコース消費量および乳酸産生量が亢進し、ワールブルグ効果を引き起こすことが判った。またGPIをがん細胞でノックダウンすると、足場非依存性増殖能が低下したことから、GPIはがん化モデル細胞特異的な代謝機構およびワールブルグ効果の主因代謝酵素である可能性が高いことを見出した。
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