がん細胞においては好気条件下での解糖亢進(ワールブルグ効果)などの特殊な代謝が行われていることは古くから知られていたが、代謝システムの相互ネットワークによる複雑性のために、その全体像を捉えることが困難であった。本申請課題では、正常細胞とがん化細胞の差異を明らかにするために、われわれが開発した網羅的な代謝酵素の絶対定量システム『情報基盤定量法(iMRM)』を利用してワールブルグ効果の実体解明を試みた。その結果、がん化細胞特異的に上昇する代謝酵素群を特定した。これらを正常細胞に過剰発現させると、好気的条件下でのグルコース消費量および乳酸産生量が亢進し、ワールブルグ効果を引き起こすことが判明した。
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