悪性腫瘍は免疫系からの攻撃を免れているが、その免疫抑制状態の維持に、腫瘍に随伴するマクロファージが関与していることが近年報告されている。しかしin vivoにおけるこのマクロファージの詳細な役割は不明である。我々は、腫瘍細胞死誘導後に免疫抑制性マクロファージのマーカー遺伝子であるCD204を高発現するマクロファージが集積することを見出した。そこでCD204陽性マクロファージを特異的に消失できるノックインマウスを作製し、このマウスを用いて、癌に放射線照射をした後にマクロファージを消失させたところ、腫瘍の再増殖を抑制できることを見出した。次にCD204陽性マクロファージが腫瘍の再増殖を促進する分子メカニズムを解明するため、放射線治療時に集積するマクロファージおよび腫瘍常在のマクロファージをセルソーターにより単離し、マイクロアレイおよび定量PCRにより網羅的に遺伝子発現を調べた。その結果、I型インターフェロンおよびその応答遺伝子が、集積するマクロファージ特異的に高発現していることを見出した。In vivoにおいて、CD204陽性マクロファージから産生されるこれらの遺伝子が腫瘍の再増殖に必須であるかを明らかにするため、CD204陽性マクロファージ特異的に発現する遺伝子をノックアウトできるマウス(CD204-iCreマウス)を作製した。上記遺伝子に対するfloxマウスを入手し、CD204-iCreマウスと掛け合わせることで、CD204陽性マクロファージのみ当遺伝子が欠失したコンディショナルノックアウトマウスを作製する。このマウスに対して癌放射線照射モデルを適用することで、CD204陽性マクロファージが腫瘍再増殖を促進する上で必須の分子を明らかにできると考える。
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