研究課題/領域番号 |
25430119
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
田崎 隆史 金沢医科大学, 総合医学研究所, 准教授 (70629815)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | UBR4 / 子宮頸がん / HPVE7 / N-end rule pathway / UBR box |
研究実績の概要 |
UBR4遺伝子は、UBR-box領域を含む分子量約600 kDaの巨大タンパク質をコードし、ユビキチン系の一つN-end rule経路の基質認識酵素であると考えられている。原始的な繊毛虫からヒトまで進化的に保存されているが、その生理機能はよく分かっていない。近年、子宮頸がんの原因であるHPV16の E7がん蛋白と複合体を構成し、がん化との関連が示唆された。本研究は、UBR4-E7相互作用の分子機構とその生化学的意義を解析し、がん化メカニズム解明に寄与することを目的とする。
平成25年度に引き続き、UBR4上のHPV16E7結合領域の解析を行った。当初の計画どおり、E7のN末15残基ペプチドを合成し、そのビオチン化したC末側とストレプトアビジンビーズを用いて、Pull-down assayを構築したが、合成したペプチドの不溶性度が高く成功しなかった。HPV16E7は98アミノ酸残基と小さいが、N末半分(47aa)は、intrinsically disordered proteinとしての性質があることが原因であると考えられた。そこで、E7全長のC末側にflagタグをつけ、大腸菌を用いで組換えタンパク質を発現させた。その可溶化画分より、抗flagビーズを用いてE7-flag蛋白を精製した。UBR4は、全長(5184aa)および、その断片の組換え蛋白を作成し、哺乳類培養細胞(HEK293)を用いて組換え蛋白を作成した。抗flagビーズ上のE7とHEK293由来の組換えUBR4を用いて、結合領域を解析した。その結果、HPV16E7とUBR4との結合には、N-end rule基質の認識に重要な、UBR box (約80aa)が関わっている事が明らかになった。がん化とN-end rule pathwayが関与している事を示唆するはじめての知見であり、さらに詳細な解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、初年度に引き続き、新規E7-UBR4結合解析法の確立とE7結合部位の決定に関する実験を行った(実験1)。E7ペプチドビーズを用いた新規E7-UBR4結合解析法は、合成E7ペプチドの化学的性状により成功しなかったので、大腸菌による組換えHPV16E7-flag蛋白発現を試みた。野生型HPV16E7の他に、第6アミノ酸から第10アミノ酸を欠損したE7(d6-10)変異蛋白、第21から第24アミノ酸を欠損したE7(d21-24)変異蛋白も作成した。大腸菌による組み換え蛋白発現実験において、よく使われるBL21(DE3)pLysS株では上手くいかなかったが、Rosettagami2(DE3)pLysS株を用いることにより、十分量の可溶化E7タンパク質を得ることが出来た。これにより、E7抗flag抗体ビーズと哺乳類培養細胞による組換えUBR4蛋白を用いた結合解析法を確立することが出来た。初年度の計画は遅れているが、今後の解析は順調に進むと考えられる。また、平成26年度に行う予定であった、UBR4欠損モデル細胞の確立(実験2)は、平成25年度中に行っており、総合的には「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果、HPV16E7とUBR4との結合には、N-end rule基質の認識に重要な、UBR box (約80aa)が関わっている事が明らかになった。今後は、さらに詳細な結合解析を行い、結合部位の最小単位を決定する。E7と(UBR4のモデル基質である)R-beadsがUBR4上で競合的に拮抗することから、UBR4によるN-end rule基質のユビキチン化をE7が阻害すると仮定できる。これを検証するため、MEF細胞にN-end ruleモデル基質であるUb-X-nsP4 (XはArgもしくはGly)とHPVE7プラスミドを導入し、X-nsP4の代謝的安定性がどのように変化するのかをpulse-chase assayを用いて解析する計画である。別の可能性として、intrinsically disordered proteinであるE7タンパク質が、宿主細胞内のUBR4と結合することにより、ordered proteinになる事も考えられる。UBR4欠損モデル細胞を用いて、E7およびUBR4の代謝的安定性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
繰越金は、平成27年3月分の動物飼育固形飼料代金として残したものである。4月24日に8,308円が支払われており、2,946円が実際の繰越金になった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度分は、予定通り、消耗品費、およびその他(振込手数料)として使用される計画である。
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