UBR4遺伝子は、UBR-box領域を含む分子量約600 kDaの巨大タンパク質をコードし、ユビキチン系の一つN-end rule経路の基質認識酵素であると考えられている。原始的な繊毛虫からヒトまで進化的に保存されているが、その生理機能はよく分かっていない。近年、子宮頸がんの原因であるHPV16の E7がん蛋白と複合体を構成し、がん化との関連が示唆された。本研究は、UBR4-E7相互作用の分子機構とその生化学的意義を解析し、がん化メカニズム解明に寄与することを目的とする。
前年度までの研究で、HPV16E7とUBR4との結合には、N-end rule基質の認識に重要な、UBR box (約80aa)が関わっている事が示唆された。UBR boxがE7結合領域であるのか調べるために、結合阻害実験を行った。まずUBR4とN-end ruleモデル基質が、E7によって阻害されるのか、そして、UBR4とE7の結合が、N-end rule阻害剤(Dipeptides)で阻害されるかを解析した。その結果、N-end rule基質結合とE7結合が互いに競合しあう事が分かった。次に、HPV16E7の培養細胞での安定性を調べた。HPV16はタンパク質分解酵素阻害剤存在下で安定化し、タンパク質転写阻害剤存在下では、短寿命であることが分かった。UBR4欠損細胞では、野生型細胞と比較して、E7タンパク質はより不安定化する事も示された。これらの結果から、UBR4はUBR box領域を介してHPV16E7と結合し、安定化する役割を持っている可能性が示唆された。
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