研究課題
腫瘍組織では、大量のグルコース消費や未成熟な血管網により、グルコース飢餓や低酸素等の特殊ながん微小環境が形成されている。本研究では,がん細胞の微小環境ストレス適応機構である小胞体ストレス応答(unfolded protein repose: UPR)を制御する因子をミトコンドリア機能調節分子やオートファジー関連因子等から探索し,その作用機序の解析を進めることで,がん微小環境選択的な治療法の開発を目指している。当該年度は,オートファジー制御因子を中心とするフォーカスドsiRNAライブラリーをヒト線維肉腫細胞株HT1080に処理することにより,グルコース飢餓感受性を変化させる新規UPR制御因子の探索を進めた。その結果,オートファジーを制御する脱ユビキチン化酵素の一つをノックダウンすることで,がん細胞(HT1080細胞やヒト悪性神経膠腫細胞株U251等)のグルコース飢餓感受性が増強することを新たに見出した。さらに,ウェスタンブロット等による作用機序解析の結果,従来のUPR阻害剤とは異なる機構を介して,がん微小環境ストレス下での細胞死を誘導している可能性が示唆された。また,その脱ユビキチン化酵素に対する低分子阻害剤が,グルコース飢餓選択的に細胞死を誘導することやUPRシグナルを顕著に抑制することを見出した。現在は,その作用機序をマイクロアレイ等を駆使して,解析中である。
3: やや遅れている
当初は,一,二年目でミトコンドリア機能調節因子から新規小胞体応答制御因子を同定する計画であったが,フォーカスドsiRNAライブラリーを用いたスクリーニング結果,現時点では有望な分子標的の同定には至っていない。そこで,現在はミトコンドリア機能調節因子に対するスクリーニングを継続しつつも,第二の候補であったオートファジー関連因子に焦点を当て研究を進めている。
現在までに見出された新規UPR制御因子である脱ユビキチン化酵素を中心に,当初の予定であったエネルギー代謝(ミトコンドリア呼吸鎖)に対する影響をXF24細胞外セルフラックスアナライザーで解析する。また,脱ユビキチン化酵素及びその低分子阻害剤のUPR抑制機序に関しては,マイクロアレイによって得られる遺伝子発現変動パターンをGene Set Enrichment Analysis(GSEA)等のツールを用いて解析することで,明らかにしていく予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Cancer Science
巻: in press ページ: -
10.1111/cas.12682