研究概要 |
本申請者らは最近、N型糖鎖の末端に付加しているα2,6シアル酸を欠損したマウス(ST6Gal Iノックアウトマウス)では腫瘍内血管新生がコントロールマウスに比べて著しく減退していることを見出した。そこで本研究課題「では、血管内皮細胞のα2,6-シアル酸修飾が腫瘍内血管形成にどのような影響を与えるのか、血管内皮細胞の増殖や増殖因子に対する反応性にどのような影響を与えるか明らかにし、その変化の背景にある分子メカニズムの詳細を明らかにすることを目的として、研究を行っている。 具体的には、本研究でα2,6-シアル酸付加が腫瘍血管新生を促す分子メカニズムを明らかにするために、i) α2,6-シアル酸欠損マウスにおいて腫瘍内血管形成が有意に減退しているか否か明らかにすること、ii) 腫瘍血管新生における要となっているVEGF-VEGFR2 伝達経路に変化が起きているか否か確認すること、iii) α2,6-シアル酸がPECAMを含むメカノセンサー複合体にどのような影響を与えているのか解析することである。 今年度は、i)およびii)に関しては、α2,6-シアル酸が欠損する血管内皮細胞を、野生型の血管内皮細胞と比べることで、細胞表面の膜タンパク質の局在が異なっていること、VEGFに対する反応性が異なることなどを明らかにしており、さらに詳細なデータ集を行っているところである。Iii)に関しては、PECAMがα2,6-シアル酸を含む糖鎖に対して高い親和性を持つ、レクチン様分子であることを明らかにした。PECAM-PECAMホモフィリックな相互作用をα2,6-シアル酸を含む糖鎖が抑制するのみならず、PECAM固相化ビーズにα2,6-シアル酸を含む糖鎖の蛍光クラスタープローブが結合することも明らかにした。PECAM自身がα2,6-シアル酸を持つバイアンテナ形N形糖鎖を持つことも明らかにした(J. Biol. Chem.in revision)。
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