研究実績の概要 |
本申請者らは最近、N型糖鎖の末端に付加しているα2,6シアル酸を欠損したマウス(ST6Gal Iノックアウトマウス)では腫瘍内血管新生がコントロールマウスに比べて著しく減退していることを見出した。この結果を受けて、本研究課題「腫瘍血管新生にシアル酸修飾が果たす役割の解析」では、血管内皮細胞のα2,6-シアル酸修飾が腫瘍内血管形成にどのような影響を与えるのか、血管内皮細胞の増殖や増殖因子に対する反応性にどのような影響を与えるか明らかにし、その変化の背景にある分子メカニズムの詳細を明らかにすることを目的として、研究を行っている。 平成26年度は、α2,6シアル酸欠損下で細胞表面にとどまれずに生存シグナルを送ることの出来なくなった接着分子PECAMの性状解析を行った。まずマウス肺からPECAMを精製して糖鎖解析を行ったところ、PECAM自身にα2,6-シアル酸を持つN-型糖鎖が多く見出された。また、構造的にはレクチン分子であるシグレックとホモロジーが高いことから、PECAMはα2,6-シアル酸を持つ糖鎖に結合するレクチン活性があるのでないか、と予想した。糖鎖をクラスター化させたプローブを用いた結果、α2,6-シアル酸を持つクラスタープローブに特異的にPECAMが結合することを明らかにし、予想通りPECAMのレクチン活性を示すことが出来た(S. Kitazume et al. J. Biol. Chem. (2014) 289, 27606、S. Kitazume et al. Glycobiology (2014) 24, 1260)。
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