研究課題/領域番号 |
25430123
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高宮 里奈 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70365419)
|
研究分担者 |
大坪 和明 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30525457)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 低酸素 / がん / 糖鎖抗原 / マクロファージ |
研究概要 |
今年度の研究では、がん細胞ー免疫細胞との相互作用となるため、今年度はC57BL/6マウス由来肺癌細胞株(Lewis lung carcinoma (LLC)細胞)を用いC57BL/6マウスに移植した同種移植モデルの作製、解析を中心に行なった。LLC細胞をC57BL/6マウス皮下に投与したところ、皮下に固形腫瘍が観察された。その固形腫瘍の中心部は、hypoxia inducible factor (HIF)-1陽性領域となり、一致してsialyl-Tn (sTn) 糖鎖抗原の発現も認められた。sTn糖鎖抗原発現領域の免疫細胞の分布を検討したところ、特異的なマクロファージやCD4陽性のT 細胞の浸潤が認められた。次に、ST6GalNacI (ST6)を高発現させたLCC細胞を作製したところ、sTn糖鎖抗原をもった蛋白の亢進がみられた。そこで、このsTn糖鎖抗原高発現細胞(LLC(ST6)細胞)をC57BL/6マウス皮下に移植したところ、移植後2週間目では、LLC(mock)細胞移植群に比べて、その皮下腫瘍体積は約半分程度であった。しかしながら、肺へのLLC細胞の浸潤は、LLC(ST6)細胞移植群では皮下に投与し3週間目で認められたが、LLC(mock)細胞移植群ではほとんど認められなかった。また、LLC(ST6)細胞を皮下に投与した肺組織では、がん免疫を抑制する事によりがん微小環境に影響を与える事が知られている、Foxp3陽性T細胞の浸潤も認められた。以上の結果より、sTn糖鎖抗原を発現は、がん関連免疫細胞(腫瘍随伴マクロファージ、CD4陽性のT 細胞)の特異的な浸潤を促し、さらにその転移能においても影響を与える事が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
in vivoでのC57BL/6マウスを用いた同種移植(皮下移植)ー肺転移を立ち上げることができた。その系を用いsTn糖鎖抗原が、がん微小環境に与える影響について免疫細胞の分布を中心に検討を行った。その結果、sTn糖鎖抗原が、マクロファージだけではなく、T細胞の表現型にも影響を与える事が確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の研究では、LLC細胞、ヒト肺癌細胞株H157細胞、ヒト乳癌細胞株で樹立したsTn糖鎖抗原高発現細胞を用い、sTn糖鎖抗原をもったタンパク質の同定と、さらに免疫細胞と会合する分子の同定を行なう。具体的には、sTn糖鎖抗原をもった蛋白については、sTn糖鎖抗原高発現がん細胞の膜分画を可溶化して、抗sTn抗体を用い免疫沈降を行い、SDSページを行ない検討する。今まで報告されている分子であれば、その抗体を用いwestern blotを行い確認をし、また報告のない分子であれば質量分析計(札幌医科大学現有施設)を用い同定する。また免疫細胞との会合分子であるが、 マクロファージ又は、単球細胞株の膜分画を可溶化し、sTn抗原を固相化したアフィニティ樹脂カラムを用い、sTn抗原と結合する分子を回収し、液体クロマトグラフ/質量分析計(札幌医科大学現有施設)を使い、その分子を同定する。さらに同定したタンパク質は、腫瘍産生因子に関わる分子やシグナル伝達などの機能解析につなげる事により、sTn抗原によるマクロファージ活性化の分子機構を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
申請者の所属の移動に伴い、当初予定していた国際学会(American Thoracic Society meeting 2013)へ参加しなかったため。 American Thoracic Society meeting 2014の旅費として使用する予定である。
|