研究課題
今年度は、silyl-Tn (sTn)糖鎖抗原発現がん細胞ーマクロファージを介したがん微小環境形成―がん転移分子メカニズムを解明するため、sTn糖鎖抗原を発現しているタンパクに着目し検討をおこなった。がん細胞上でsTn糖鎖抗原を発現しているタンパクを同定するため、sTn糖鎖抗原発現肺がん細胞株(H157(sTn(+))の細胞可溶化画分を抗sTn抗体で免疫沈降後SDSページを行なったところ、高分子量のところに3本のメジャーなバンドが認められた。次にこの3本のバンドについてウェスタンブロットで確認したところ、インテグリン、ムチン、CD44であった。インテグリンは白血球ーがん細胞との相互作用に関わる事が知られている事から、sTn(+)/α2インテグリン欠損株(H157(sTn(+)/α2(-))を作製した。H157(sTn(+))株と単球細胞株(THP-1)を共培養すると、THP-1から免疫調節サイトカインであるIL-8, IL-10, TNF-αの産生がH157(vector)に比べ亢進していたが、H157(sTn(+)/α2(-))株との共培養ではその亢進がH157(vector)と同程度にまで低下した。次に、がん細胞と単球との細胞間相互作用に細胞間の接着の亢進が関与しているか、H157(sTn(+))上でTHP-1をローリングさせ解析を行なった。すると、H157(sTn(+))上での白血球のローリング速度は、H157(vector)と比べ優位な低下が認められたが、ST6高発現α2インテグリン欠損株(H157(sTn(+) /α2Integrin(-))では認められなかった。以上の結果より、がん細胞のα2インテグリン上へのsTn糖鎖抗原の発現は、マクロファージや単球との接着能を亢進させ、さらに単球に腫瘍随伴マクロファージ様の変化を与えている事が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
sTn糖鎖抗原を発現しているタンパクの同定、及びTHP-1細胞の活性化に関わっているsTnを発現したタンパクの同定を行なう事ができた。その結果、欠損株を用いた機能解析まですすめる事ができた。
次年度の研究では、sTn糖鎖抗原が発現することによるがん細胞自身へ及ぼす影響について検討を行う。sTn糖鎖抗原が発現していた分子の中で、CD44に着目しその機能から解析を行う。CD44はがん幹細胞のマーカーでもあること、また最近CD44のバリアントアイソフォームがシスチンのトランスポーターとなり、酸化ストレスに対する耐性を獲得する事が報告されている。そこで、まずsTn糖鎖抗原のCD44への発現が分子そのものの発現に影響を与えるか、細胞表面、細胞内に分けてFACS, ウェスタンブロットで確認を行なう。また、CD44のバリアントアイソフォームがシスチンのトランスポーターとなり、酸化ストレスに対する耐性を獲得する事が報告されている事から、CD44のバリアントアイソフォームを確認し、さらに酸化ストレスを引き起こす薬物に対する耐性について検討を行う。
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