研究課題
我々は新規p53標的遺伝子Mieapが、高い活性酸素種の産生やエネルギー産生能の低下を示す不良なミトコンドリアを修復あるいは排除する機能によって、ミトコンドリア品質管理(以下MQC)に重要な役割を果たしていることを見いだした。Mieapはヒトがん細胞株において高頻度にメチル化により不活性化されていたことから、様々ながん臨床検体を用いてMieap関連遺伝子(p53, Mieap, BNIP3, NIX)の異常について、ゲノム・エピゲノム解析を行った。大腸がん・膵がん・乳がん・胃がん・食道がん症例のがん組織について、Mieap/BNIP3/NIXのプロモーターメチル化の有無や、p53遺伝子の変異の有無について検討を行ったところ、50~70%の症例で、p53/Mieap/BNIP3のいずれかに異常を認め、Mieap制御性MQC機構が高頻度に異常をきたしていることが明らかとなった。胃がん・大腸がん・乳がん組織について、抗Mieap抗体、抗ミトコンドリア抗体・抗ニトロチロシン抗体を用いた免疫組織化学解析を行い、生体内におけるMieap制御性MQC機構の役割を調べた。Mieapの発現は高頻度に消失あるいは発現パターンの異常を示した。興味深いことに、ほぼ100%の症例でがん細胞特異的に高度の異常ミトコンドリアの集積を認めた。さらに、このミトコンドリアから高いレベルの活性酸素種(ROS)が産生されている可能性が示唆された。大腸がん細胞株の解析から、Mieap制御性MQC機構の異常は、低酸素環境下で不良なミトコンドリアの集積とそこから産生されるROSの増加を認め、ミトコンドリア由来ROSはがん細胞の遊走及び浸潤活性を顕著に促進させた。以上の結果から、Mieapは生体内の低酸素環境下においてミトコンドリアの品質管理を介して、がんの増殖・浸潤・転移を抑制している可能性があると考えられる。
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Oncogenesis
巻: 4 ページ: e181
10.1038/oncsis.2015.43.
http://www.nccri.ncc.go.jp/s004/