研究課題
基盤研究(C)
本研究では、除菌後に存在するDNAメチル化異常は幹細胞レベルで誘発されたものであることを示し、幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常の量が発がんに重要であることを明らかにすることを目的とする。特定遺伝子のDNAメチル化を組織レベルで観察することはできない。そこで、これまでに見出したDNAメチル化の存在と発現の消失が1:1で対応するX染色体上の遺伝子 (SMARCA1, FHL1, MAOA, MAOB, CXorf26等)を利用する。胃がん切除症例の胃粘膜を用いて、上記遺伝子の免疫染色を行う。幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常は腺管全体に存在する (従って腺管全体で発現消失)一方、前駆細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常は腺管の一部に存在する (従って腺管の一部で発現消失)ことが予測される。除菌後の症例では前者の染色パターンが観察され、感染中の症例では後者のパターンになることを示し、幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常の重要性を明らかにする。上記の5つの候補遺伝子のうち、今年度はFHL1に着目し、FHL1が正常胃腺管で発現していること、胃がん細胞株AGSや、MKN28ではメチル化サイレンシングしていることをqRT-PCR、及びWestern blotにて確認した。今後、胃がん切除症例の胃粘膜(H. pylori感染陰性10例、陽性10例)の収集と併行して、免疫組織染色を行う。
3: やや遅れている
免疫染色について、候補遺伝子に対する抗体の選定が難航している。また、胃粘膜検体の収集について、H. pylori感染陰性症例の収集が難航している。そのため、現時点では予測される免疫染色パターン (H. pylori感染陽性症例では、幹細胞から分化した細胞まで、様々な幹細胞レベルでDNAメチル化が誘発されるため、腺管の一部で発現が消失すると予測される。一方、陰性症例では、誘発されたメチル化異常は腺管全体に存在するため、 腺管全体で発現が消失すると予測される)を確認するまでに至っていない。
免疫染色について、よい抗体が得られない遺伝子については、順次in situハイブリダイゼーションを試みる。胃粘膜検体収集については、ピロリ陽性に比べて収集が困難な、ピロリ陰性胃粘膜検体の収集に注力する。単施設で十分な症例数が得られない場合、複数の施設での収集を検討する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Oncogene
巻: 32 ページ: 2140-2149
10.1038/onc.2012.228