研究実績の概要 |
本研究では、除菌後に存在するDNAメチル化異常は幹細胞レベルで誘発されたものであることを示し、幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常の量が発がんに重要であることを明らかにすることを目的とする。 特定遺伝子のDNAメチル化を組織レベルで観察することはできない。そこで、これまでに見出したDNAメチル化の存在と発現の消失が1:1で対応するX染色体上の遺伝子 (SMARCA1, FHL1, MAOA, MAOB, CXorf26等)を利用する。 胃がん切除症例の胃粘膜を用いて、上記遺伝子の免疫組織染色を行う。 幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常は腺管全体に存在する (従って腺管全体で発現消失)一方、前駆細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常は腺管の一部に存在する (従って腺管の一部で発現消失)ことが予測される。除菌後の症例では前者の染色パターンが観察され、感染中の症例では後者のパターンになることを示し、幹細胞レベルで誘発されたDNAメチル化異常の重要性を明らかにする。 昨年度はFHL1の免疫組織染色を試みた。その結果、粘膜筋板は強く染まったが腺管上皮の染色は弱く、上記の染色パターンは得られなかった。今年度はSMARCA1に着目した。研究協力者の竹島らは、本研究とは別に、SMARCA1が正常胃腺管で発現していること、複数の胃がん細胞株ではメチル化サイレンシングしていることを報告した (Takeshima, Cancer Lett, 357:328, 2015)。そこで、免疫組織染色の準備として、胃がん細胞株AGS (メチル化(+))、TMK1 (メチル化(-))を用いてSMARCA1の免疫染色を行い、良好な染色結果を得た。今後は胃粘膜を用いた免疫組織染色を予定している。
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