研究課題/領域番号 |
25430128
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
近藤 格 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, その他 (30284061)
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研究分担者 |
川井 章 独立行政法人国立がん研究センター, その他部局等, 研究員 (90252965)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 転移性骨腫瘍 |
研究実績の概要 |
転移性骨腫瘍は肺癌、乳癌、腎癌、前立腺癌などで進行した症例において比較的多く認められる。本邦では年間約5万人から10万人が骨転移を発症しており、癌の罹患率の増加と治療法の発展に伴い、骨転移患者の数は増加している。骨転移自体は生命危機を直接来さないが、骨転移による病的骨折は癌患者のQOLを著しく損ない、間接的に生命予後に悪影響を及ぼす。骨転移を早期に診断することで治療成績が向上するとの報告があるが、骨転移に特異的なバイオマーカーは見つかっていない。したがって、骨転移の治療法および早期診断の開発が重要な課題である。我々は臨床検体を用いた発現解析から転移性骨腫瘍において高発現する分子を特定し、特定した分子の機能的および臨床的な意義を明らかにしようとしている。蛍光二次元電気泳動法を用いたプロテオーム解析と、DNAマイクロアレイを用いたmiRNA発現解析を実施し、原発腫瘍組織に比べて転移性腫瘍組織において高発現するタンパク質とmiRNAをそれぞれ同定していた。本年度は同定したタンパク質の治療標的およびバイオマーカーとしての有用性を検討した。特定したタンパク質の機能を阻害する化合物を入手し、骨の腫瘍細胞を用いてin vitroでの阻害実験を行い腫瘍細胞の増殖抑制作用があることを見出した。また、同化合物の腫瘍抑制作用を調べるために阻害剤の投与前後のサンプルを用いてDNAマイクロアレイの実験を施行した。そして、同定したタンパク質が腫瘍細胞から培地中に放出されていることを抗体を使って見出し、臨床検体を用いた検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同定したタンパク質の機能を抑制する化合物を入手するのに時間がかかったが、その後の実験は順調に進行し、腫瘍細胞の増殖抑制効果があることがわかった。同定したタンパク質が腫瘍細胞から培地中に放出され安定して存在していることが確認でき、検証実験のための血液検体の採取を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞に対する増殖抑制効果の分子背景を調べる。白血病や肝細胞癌の腫瘍細胞では抗腫瘍作用の分子背景が報告されており、類似の分子機構の存在を、mRNAの発現解析の結果と併せて検討する。同定したタンパク質は腫瘍細胞から放出されていることをin vitroで見出しており、転移症例において同タンパク質が血中に存在している可能性を、臨床検体を用いて調べ、バイオマーカーとしての可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は機能解析を主とした研究を想定していたが、同定されたタンパク質の機能や阻害作用のある化合物に関する論文が出版され、機能解析を主に進める意義が低くなった。そのため研究方針の大幅な転換を余儀なくされた。
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次年度使用額の使用計画 |
抗腫瘍効果の分子背景と、バイオマーカーとしての有用性の検討を行う。
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