研究実績の概要 |
本研究は、質量分析法を用いた高感度スフィンゴ脂質定量系によって、健常者及び各がん患者の血漿中スフィンゴ脂質類を定量分析し、特にスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の新規腫瘍マーカーとしての臨床応用性を検討するものである。今年度は、測定プロトコールの開発に継続的に取組と共に、臨床的評価を検討した。現在のサンプリング条件は煩雑で採血者に負担がかかるため、採血後迅速に氷冷・遠心後に得られた血漿試料とルーチン業務で得られた血清試料を比較した。健常者と食道癌患者血漿S1P濃度がそれぞれ400 nMと600nMであった。一方、ルーチン業務によって得られた血清S1P濃度は633 nMと1,420nMであった。試料の状態により、測定値に違いがでることが推察された。セラミド等他の脂質類を評価するために、LCカラムをC18系からC8系に変更し、分析条件等を検討中である。インビトロでの細胞外S1P産生能評価系を構築するにあたり、FBS、活性炭あるいは透析処理されたFBS中のS1P濃度を評価したところ、いずれも30nM程度S1Pが含まれていた。そこで無血清培養であるCD CHO培地にスフィンゴシンを添加した培地を用いる細胞外S1P産生能評価系を構築し、各種ヒト癌細胞における細胞外S1P産生能を評価したところ、TE-8>PK-45H>HK-2>AGS-45>>MCF-7となり、細胞腫による違いが明らかになった。さらに関与するmRNA発現量をRT-PCR法により評価し、違いに寄与する分子の同定を行っている。
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