研究課題/領域番号 |
25430140
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高 ひかり 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60338374)
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研究分担者 |
藤村 務 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70245778)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 膀胱がん / 膀胱がんの早期発見・診断 / 尿中腫瘍マーカー / 糖タンパク質 / 糖鎖修飾ペプチド / 糖鎖修飾ペプチド抗体 / ELISA / ウエスタンブロット |
研究概要 |
研究の目的 泌尿器系がんのなかでも膀胱がんは前立腺がんにおけるPSAのような有効なスクリーニングマーカーがないことなどから、現在のところ一般人を対象とした検診スクリーニングは施行されていない。しかし、膀胱がんの予後は依然として悪く早期発見・診断が強く望まれる。申請者は、膀胱がんの早期発見につながる患者への負担が少ない尿中腫瘍マーカーの探索を行った結果、候補と成り得る糖タンパク質を見つけた。糖タンパク質の性質を詳細に調べると共に糖鎖修飾ペプチドを抗原とする抗体を作製し、膀胱がんの早期発見・診断につながる尿中腫瘍マーカーとしての有効性を評価する。 研究実施計画 1.膀胱がん患者(グレード3以上)及び健常人由来の尿から糖タンパク質X及びYを免疫沈降及びゲル濾過法を用いて精製した。単離した糖たんぱく質X及びYをトリプシン消化後、Sepharose CL4Bを用いる和田らの方法に従ってGlycopeptideを分離精製した。膀胱がん患者由来の糖たんぱく質X及びYではNeuAc α2-6/ 3Gal/ GalNAcを有する糖鎖構造が上昇していた。抗体を作製するのに必要な抗原である Glycopeptideの必要量を得るのに予定よりも時間を要した。2.Glycopeptide抗体の作製:精製した抗原 Glycopeptideをキャリア担体に結合させた。[ウサギへの免疫]キャリア担体に結合させたペプチドをFreund's complete adjuvant 100ulと混ぜてエマルジョン化しウサギ背皮下数か所に注入した。→ 追加免疫は同量の抗原とincomplete Freund's adjuvantを用いて行った。→ 耳静脈より採決し血清を分離した。→ ELISA或はウエスタンブロットにて抗体の確認。→ プロテインGカラムにてIgGを精製した。→ ウエスタンブロット等で抗体の特異性を評価中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「糖鎖修飾ペプチドの精製」膀胱がん患者(Grade 3以上) 及び健常人由来の尿から糖タンパク質X及びYを免疫沈降及びゲル濾過法を用いて精製した。単離した糖たんぱく質X及びYをトリプシン消化後、Sepharose CL4Bを用いる和田らの方法に従って糖鎖修飾ペプチド (Glycopeptide)を分離精製した。Glycopeptideを抗原にしてウサギに免疫を行い抗体を作製した。 「抗体の評価」スクリーニングとして膀胱がん患者(Grade 1,2,3,4)、健常者由来の尿を用いてウエスタンブロットを行い、尿中糖タンパク質X及びYに対する反応性からがん患者由来のGlycopeptide抗体の特異性の評価を行っている最中である。 「糖タンパク質X及びYの糖鎖構造解析」精製した糖タンパク質のN結合型糖鎖の構造解析は西村らのBlotGlyco法を、O結合型糖鎖の構造解析は篠原らの方法を用い行った。その結果。健常人と比較して膀胱がん患者由来の糖たんぱく質X及びYではシアル酸を有するNeuAc α2-6/ 3Gal/ GalNAc及びフコシル化の糖鎖構造が上昇していた。O結合型糖鎖は検出されなかった。抗原であるGlycopeptideの必要量を得るのに予定よりも時間を要したが、質量分析によりがんで上昇する糖たんぱく質X及びYの糖鎖構造を解析することが出来た。今年度は、研究計画全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「糖鎖修飾ペプチド抗体の特異性の評価」作製した抗体をダイレクトあるいはサンドイッチELISA法により健常者とがん患者由来の尿を比較し、特異性と感度の評価を行う。膀胱がん患者の早期診断への実用性を評価する。 「多項目同時測定システムの開発」糖タンパク質X及びYのタンパク質に対する抗体(市販品)と作製したGlycopeptide抗体を用いた多項目同時測定系の構築を試みる。多項目同時測定システム(Luminex®200xPONENT):Luminexテクノロジーシステムの測定系はフローサイトメーターと同様な原理で、赤色と緑色レーザーをビーズに照射する。赤色のレーザーはタンパク質の識別、緑色のレーザーはタンパク質の2次抗体に照射しその蛍光標識を検出して定量を行う。この2色のレーザーを照射することにより、各ビーズの識別と蛍光標識の蛍光値の情報を得ることができるため、多種のビーズが混在した状態でも検出することができ、多項目の同時測定が可能になっている。一次抗体(市販品/赤色)として尿中のタンパク質X及びYをキャプチャーし、二次抗体としてビオチン標識糖鎖修飾(Glycopeptide)抗体を結合させストレプトアビジン-フィコエリスリン(PE)で蛍光ラベル(緑色)する。この測定方法を利用して尿中の糖タンパク質X及びYの糖鎖修飾(Glycopeptide)量を同時に測定する。従来のELISA法に比べ試料量や測定時間が短縮され低コストであり、スループットの大幅な向上を実現できる。多項目の分析結果を多角的に評価することにより検出感度及び特異性の向上が期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を申請するに当たり計上した研究費については、消耗品を主体とした経費が大部分を占める。1)抗体作製及び精製に必要な酵素、試薬、カラム、チップ、器具、動物、飼育代その他。2)抗体確認の為のウエスタンブロット関連試薬。3)ELISA法の系を構築するための測定試薬。4) LUMINEX測定用関連試薬、ビーズ、蛍光色素、結合試薬など一般試薬、器具類。旅費については国内学会に年1~2回の発表分を算定している。国際学会については年1回分を算定している。論文の投稿に必要な英文校閲費、投稿費用等を予定している。 予算配分:1)抗体作製及び精製に必要な酵素、試薬、カラム、チップ、器具、動物、飼育代、その他とし40万円。2)抗体確認の為のウエスタンブロット関連試として20万円。3)ELISA法の系を構築するための測定試薬として35万円。4) LUMINEX測定用関連試薬、ビーズ、蛍光色素、結合試薬など一般試薬、器具類として35万円。旅費については国内、国際学会合わせて20万円、論文の投稿に必要な英文校閲費、投稿費用等には10万円を予定している。
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