研究課題
膀胱癌は泌尿器系悪性腫瘍の中では前立腺癌に次いで多い癌であるが、前立腺癌におけるPSAのような有効なスクリーニングマーカーがない。しかし、膀胱癌の予後は依然として悪く早期発見・診断が強く望まれる。現在、膀胱癌マーカーとして最も有効性が高いといわれている尿中NMP22は尿路感染症で偽陽性率が高い。我々は、膀胱癌の早期発見につながる患者への負担が少ない尿中腫瘍マーカーの探索を行った結果、候補と成り得る糖タンパク質を見つけた。この糖タンパク質から糖鎖修飾ペプチドを抗原とする抗体を作製し、膀胱癌の早期発見・診断につながる尿中腫瘍マーカーとしての有効性を評価した。膀胱癌患者尿から見つけた糖タンパク質X及びYのタンパク質に対する抗体(市販品)と作製した糖ペプチド抗体を用いた多項目同時測定系の構築を図った。サンドイッチELISA法により健常者と癌患者由来の尿を比較し、特異性と感度の評価を行った。一次抗体にタンパク質に対する市販品の抗体X及びYを用い尿中のタンパク質X及びYをキャプチャーした。その後、二次抗体としてビオチン標識糖鎖修飾ペプチド(糖ペプチドX及びY)抗体を結合させ、ストレプトアビジン-フィコエリスリン(PE)で蛍光ラベルした。この方法により、尿中の糖タンパク質X及びYの糖鎖修飾ペプチド量を同時に測定することが可能となり、従来のELISA法に比べ試料量や測定時間を短縮することができた。膀胱癌患者の悪性度のGradeが進行する程に蛍光強度が増加した。特に、75kDaの糖タンパク質 Xで顕著であり、膀胱癌患者由来の尿と健常人由来の尿を優位に区別することが可能であった。試料量は尿10~100ulで検出可能であることから、感度は十分であった。糖タンパク質X及びYの糖鎖を同時に測定することにより膀胱癌患者由来の尿と健常人由来の尿を優位に区別することが可能であり、NMP22を補完できる診断法の可能性を示した。
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